眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

めっちゃ話したその行く末

bigpopmonster.hatenadiary.jp

 

 

2週間ほど前から熱心にLINEのやりとりをしてる美鈴さんと、2回目のお茶をしてきた。

 

 

今回は彼女の家の近くでお茶しましょう、ということで13時過ぎに横須賀で待ち合わせることにした。前日は夜遅くにLINEが返ってきたので、「仕事でくたくたになっていないといいんだけれど」と心配していたが、改札を出て彼女の姿を見たらそれは杞憂に終わった。元気そうに佇んでいる彼女に挨拶をして、お目当ての喫茶店へ。横須賀は私が新入社員の頃に一度行ったきりなので、横須賀というだけでテンションはすごく上がっていた。前回は自分が話しすぎてしまったので、今日はあまり話さないようにしよう、美鈴さんの話をとことん聞こうという心構えでいた。喫茶店に着くと何組か待っていたが、5分ほどすると席に案内された。飲み物と、二人でシェアするパンケーキを頼み、暫し話をする。今日のデートで手応えがあったら彼女に告白しようと思っていて、そのせいかところどころで話がつっかえる、それは私が必要以上に緊張しているせいだった。流暢に話していた彼女だが、私が少しでも緊張して真顔になると、彼女も真顔になってしまい、その空気に耐えられなくなった私は一旦告白のことは忘れ、今この瞬間の会話に集中することにした。1回目で既に話しやすかったのだが、2回目では旧知であるかのような間柄の雰囲気が漂っていて、それは私の勘違いなのかもしれないけれど、あまりにも会話がスムーズというか、阿吽の呼吸で話が進んでいくので、え、これ、一体なに?と不安になった。話がスムーズに進むのは私が前回以上に心を開いて話しているということもあるが、美鈴さんがテンポよく会話を進めてくれているおかげでもあった。そこで2時間近くお話してて、音楽の話、どういったきっかけでライブに行ったのかとか、飼っている兎の話、その兎とどのようなコミュニケーションを取っているのかとか、いろんな話をたくさんした。ずっと話していられる、これ一体何、でもずっと話し続けているのは途中でしんどくなるというか、私と美鈴さんは恋人ではないので、打ち解けているとはいえ緊張はしているし、遠慮もしているので、その辺の、普段は使わないような筋肉をバッキバキになるくらいに使い倒して、頭もフル回転で話し続けていたので、喫茶店を出る頃にはくったくたの体を外に追い出した。

 

 

私のなかでは一日に話せる言葉はとっくのとうに使い果たしていたが、今日の2つ目の目的地であるお寺へ行くので、もちろん会話は続く。ただ喫茶店のときのような、ずっと神経を研ぎ澄ましてするような感じの会話ではなく、ふっと思いついたことを口に出す、ほぼほぼ独り言のようなことをそっと美鈴さんに手渡して、うとうとしている美鈴さんがそれを大事そうに抱えているのをのんびり眺めていた。バスに揺られる10分、そんな会話をぽつりぽつりしながら、先ほどの会話の余韻に浸っているような、陽に照らされてのほほんとしているような、このあいまいな時間がずっと続けばいいのになと思っていた。

 

 

お寺はそこそこ人がいた。木に囲まれているからか、先程の茹だるような暑さはなくなり、時折どこかから吹いてくる風を浴びながら、一通り寺の中を散策した。3分ほどで散策は終わってしまい、お寺に置いてあったベンチに座り、ぼーっと森林を眺めながら美鈴さんと話す。先程の喫茶店では面と向かって話していたせいで多少の緊張を孕んでいたが、今回はお互いが同じ方向を向き、たまに相手の顔を見て話す感じだったので、あまり緊張はしなかった。単に美鈴さんと話すことに対して慣れが生まれていたからかもしれない。そこでも私たちは飽きることなく、いろんな話をいったりきたりしながらえんえんと話していた。なんでこんなにも次から次へと話したいことが産まれ出てくるのか分からないくらい、私の口の中では話したいことが待ち構えていて、でも美鈴さんも私と同じくらいの熱量で話していたので、だからこそいい塩梅に会話が続く、そしてお互いに満足のいく時間になっていたのかもしれない。薄々思っていたことを彼女に訊いてみると、それは的中していた。私たちは同い年で、血液型は違ったが、生まれ育った環境は結構似ていた。その類似性に奇妙さを感じつつ、謎の連帯感も生まれながら、えんえんと話し続けていたら「今日はそろそろ閉めますので」とお寺の方が来たので、私たちはとりあえず外に出た。

 

 

さてどうしましょう。バスに乗って横須賀駅に着いたら17時前ですね。お腹空いてます?そんなに空いていないです。でもせっかくだからどこかで軽く食べませんか?そうしましょう。どちらからともなくそういう会話が生まれて、美鈴さんが前々から行きたかったけれど行けていなかったお店へ行くことに。予約はしていなかったので、外の、日差しがもろに降りかかる席で軽い夕飯を食べる。ピザとサラダと、お互いにドリンクを頼み、そしてまたそこからえんえんと話し続ける。いつまでこれ、話し続けられるの。そもそも普通の人ってこんなにも話し続けられる体力が存在するの?と不思議に思うくらいに、美鈴さんは今日会った時と変わらぬ熱量で話をしていた。仲がだいぶ良くなっているとはいえ、まだ出会って2週間も経っていないので、彼女に遠慮するぶぶんは多く、私はだいぶ疲れていた。そして疲れてまともな思考が働かなくなったせいで、今日告白するという強迫観念が私をどんどんと追い詰めていった。次いつ会えるか分からない、他の人とも私と同じようにやり取りしてて、その人に美鈴さんを奪われるのは嫌だ、告白するなら今日しかない。しかし、薄々だけれど、告白したところで成功はしないんだろうなということは分かっていた。LINEでやり取りしてるとき、人と仲良くなるのにはとても時間がかかるタイプだと美鈴さんは言っていて、まだ2週間前に知り合って、LINEはそこそこしてるけれどまだ2回しか会っていないのから、恋愛感情なんて湧かないだろう。ここで告白するのは馬鹿げている、自分の満足のためだけに彼女に迷惑をかけるな。そう心のなかで訴えている自分が何人かいたのに、暑いことと、たくさん話したことでくったくたになった頭は、正常な判断をくだせなかった。

 

 

今から告白するんだ、と思うと急に緊張してきて、うっうっ、先程までテンポ良く会話ができていたのにきちんと相槌を打つことができなくなってしまい、告白ばかりが頭を支配して新しい話題を提供することもできなくなり、美鈴さんの顔を見ては顔が赤くなり、景色を見て緊張を和らげる、などをして、そのあまりの挙動不審さに、「どうかされました?」と美鈴さんが声をかけてくれたが、「いや、なんだかよく知らないんですけれど、急に緊張してきてしまって。なんででしょう」と訳の分からないことを口走っていた。夕方の端の方までいった頃合い、その時に告白のような、でもとても迂遠な表現なので、「この男は一体なにを話しているのだろう」ということを、つっかえつっかえ話していった。それは告白という形を成していない、一人の男の自己満足だった。そんなくだらない自己の吐露に対し、美鈴さんは、「まだ会ってそんな経っていないですし。徐々にお互いのことを知り合っていければいいなと思っています。焦ることはないですよ」と優しい言葉をかけてくださり、もうなんて素敵な人なんだろう、と泣き出しそうになった。

 

 

そこから、告白しないといけないという強迫観念から抜け出して、先程までの、テンポの良い会話に戻り、会話を楽しむ。告白紛いのことをしてしまったのでタガが外れてしまったのだろうか、素面ではとても聞けないようなこと、主に美鈴さんの恋愛に関すること、どんな人を好きになる傾向にあるのかとか、今までどんなお付き合いをされてきたのかとか、そういったことをえんえんと聞き、反対に私も聞かれたのでそれらをえんえんと話していた。そこで、美鈴さんは頭の良い人、自分では辿り着けないような考えを出来るような人に魅力を感じる、好きな人の前ではニコニコしてしまうのでとても分かりやすいねと友達に言われること、押しに弱いので、そこまで好きではないけれど付き合った過去もある、考えが濃い人が好きになる傾向にあるのかな、でもそういう人に限って顔が濃かったりする、考えの濃さと顔の濃さは相関するのだろうか、と途中からふざけたりもして、そんな深い部分の話をしてたので余計に私は頭がくらくらするというか、そういったことを誰かと話す機会がほとんどないので、それを誰かと話すことができている今がたまらなく楽しくて、もし美鈴さんと恋仲にならなくても、友達としていられたら楽しいんだろうな、社会人になって初めてできる友達が美鈴さんだったら素敵だろうな、とか考えていたら店員さんが近づいてきて、「ラストオーダーです」と告げた。辺りはだいぶ暗くなっていて、料理は食べ終えていたので、ちょっと会話をしてから店を出た。そういえばお会計なのだけれど、喫茶店では私がお手洗いに行っている間に美鈴さんがお会計を済ましてくれていて、今回の会計は割り勘になった。こういう金銭感覚の人と付き合いたい、奢られることに慣れてるような、言い方が悪いけれど金銭感覚が傲慢な女性とは今後お茶をしたくないなと思った。さっとお金を出してくれるような美鈴さんに対しては、奢ることは苦ではなく、むしろ奢りたいよ、奢らせてくれと思うような、そんな人間が私です。

 

 

たくさん話したので、駅までとぼとぼ歩くときはお互いほぼ無言で、でもそれは嫌な無言ではなく、仲が良い人同士の素敵な無言で、だから今日のこの瞬間が終わってお別れしても、彼女との関係が継続してくれたらいいのにな、と切に願っていた。電車は途中まで一緒で、途中の駅で彼女は降りた。くたくたがピークに達していたので、美鈴さんにお礼のLINEを送ることはすぐ出来ず、まずは今日のデートを思い返していた。たくさんの失敗を思い出して恥ずかしくなり不甲斐ない気持ちになったが、あそこでああいう対応が出来たのは良かったと思うぶぶんもあり、総合的には少しだけ満足のいくデートだったと思う。でもまだ私は美鈴さんから恋愛対象として見られていなくて、でもそれって今からどうこう足掻いて解決する問題なのだろうか、ここで恋愛感情が湧いていなかったら、これからだらだらと会っていても友達どまりなんじゃないか。と思ったが、普段人には話さない、でも話したいと思っていることを話せる人がこの世界にいるってのは素敵なことだよな、今ここで恋人がー、結婚がー、と喚き立てるのは幼稚というか、そもそも私は本当に結婚したいのかな?ということまで考え始めてしまったので、そっとイヤホンを耳に差し込んで、しばらくは無の状態で音楽を聴いていた。

 

 

別れてから30分ほどしてようやく体力が戻ってきたので、彼女にお礼のLINEをして、新宿でだらだらしてから家に帰り、まただらだらしてると彼女からLINEが返ってきた。「ゆっくり仲良くなっていきましょう」私が性急に関係を進めようとしたことを、やんわりと注意してくれる美鈴さんはやっぱり素敵な方で、だから美鈴さんとの仲はゆっくり深まっていけばいいなと思っている。次に会う約束はしていないけれど、きっと会えるような気がしている。大丈夫、もしこの関係が終わってしまったとしても、今日のことは一生忘れることはないと思う。でも当分は他の人との関係を進めるようなことはしないかな。単純に他人に対して捧げられるリソースを全て使い尽くしてしまい、今はただただ一人でのんびりと読書をしていたいと思う、そんな夜。