眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

話しすぎてしまった、だって楽しかったから

昨日のお昼過ぎ、音楽大好きな人とお茶をした。

 

bigpopmonster.hatenadiary.jp

 

結論から申し上げると、むちゃくちゃ楽しかった。自分が話すことに対して相手はすごく同意し、絶妙な返しをしてくれた。そこで私は過ちを犯してしまった。こういう場では相手が多く話すことにより相手が充実した時間を過ごした、また会いたいと思ってくれるのが大事なのだけれど、私は自分のことを話しすぎてしまった。美鈴さんがあまりにも優しく、絶妙に話を聞いてくれるので、気持ち良くなった私は話し続けてしまった。私が熱心に話したそれ、彼女は楽しく聞いてくれていたのだろうか。(つまんないけど、不機嫌な態度を取ると面倒なことをされそうだから、取り敢えずニコニコしておくか)と思われていたのではないか。だってこんなにも面白くて素敵な時間を過ごせるなんて、あまりにも現実離れしていないか。充実した時間を過ごし、美鈴さんにさよならをする時には、(もっと話していたい)という気持ちが強くて、でもこれは私だけが抱いている感情で、彼女は嫌々お茶をしてくれていたのかもしれない。分からない。でも、めっちゃ楽しかったんだよ。

 

 

私の最寄駅でお茶をすることになった。改札の前で待ち合わせすることにして、早めに着いたので彼女のことをのんびり待っていた。約束時間ちょうどに彼女らしき女性が現れた。アプリに載せていた写真と若干雰囲気が異なるけれど、事前に教えてくれていた服装をしているし、顔もそんな感じだった。相手もこちらをチラチラ見ていたので、「美鈴さんですか?」と声をかけると、「はい、そうです!」と応えて、そこからすぐにお目当ての喫茶店へ向かった。昨日で梅雨明けしたので、物凄い勢いで太陽の光が降り注いでいた。日向に出ると彼女は持っていた日傘を差した。

 

「もしよかったら入りますか?」

 

天使...!、と思いながら、彼女の好意に甘える。喫茶店まで歩く約10分、今までのデートではとても気まずい思いをすることが多く、他愛のない、してもしなくてもどっちでもいいような話をすることが多かったのだけれど、美鈴さんとの間ではそんな気まずい空気は流れていなくて、どんな些細なことでもしっかりと受け止めてくれるような雰囲気が既に流れていたので、今にフォーカスした話題(昨日梅雨明けして、めっちゃ暑いですね)とか、最近の休日の過ごし方とか、そういったことをとりとめなく話していた。ここの短い時間の中で、(美鈴さん、めっちゃ話しやすい...)と感動していて、でもこんなにも話しやすいということは相手が私に合わせてくれているということでもある可能性があるので、あまり調子に乗らないようにしようと自分を戒める。

 

 

茶店につき、席が空いていたので好きな席に座り、私はアイスコーヒー、美鈴さんは紅茶、それと2人ともケーキを頼み、飲み物が運ばれてくる前にだいぶ親密な話をしていた。LINEでメッセージをしている段階で美鈴さんに対する興味は爆発していたので、聞きたかったことを怒涛のように、でもあまりがっついていないような雰囲気を醸し出しながら聞いていく。でも彼女の話の聞き方があまりにも上手で、それは私の話がどれほど稚拙でもしっかりと受け止めてくれる、そんな面白い話ではないけれど微笑んでくれて、「それってこうですよね?」と絶妙な返しをしてくれるので、気づいたら私の方が話してばかりいた。話せば話すほど私の中の何かが軽くなっていくような、自分の中の、穴が空いていたぶぶんが埋まっていくような、そんな気分だったので、ずっと楽しくて、頭がどうにかなるんじゃないかと思った。

 

 

私が少しボケると、くしゃっとした笑顔になる美鈴さんがあまりにも素敵なので、1回目のデートなのにちょくちょくボケてしまった。ボケることは技術が必要な行為だし、信頼関係ができていないとただの「寒い奴」になるのだけれど、そんな雰囲気はなくて、でもそれは美鈴さんがとても優しかったからなのかな、と今更ながら思う。

 

 

2年前に地方から転勤してきて、今は神奈川で一人暮らしをしている。前は九州の南の方にいたけれど、興味のある部署があり、そこのお偉いさんに何度も何度も電話でお願いしたら、そこに異動になった。だから関東に来たのはまだ最近で、コロナのこともあってまだまだお店を開拓できていない。休日は家にいることが多くて、大学時代の友達はみんな地元で就職しているので、友達がこっちにはほとんどいない。家で音楽を聴いたり、編み物をしたり、本を読んだりしている。一人でいることは苦痛ではないけれど、いい歳になってきたし、一人で楽しめることは存分に味わったつもりなので、そろそろ二人で人生を味わいたい。

 

 

今の職場は18時とか19時に終わる。職場の雰囲気はとにかく物静かな人が多くて、常に職場がしんとしているのがちょっと怖い。私は同僚とたまに私語を挟んだりしてコミュニケーションを取るのが大事だと思っているけれど、今の職場の人は自分の世界に入っている人が多くて、なかなか仲良くなれない。一人ひとり、取り組んでいる仕事は異なるので、仕事のことでコミュニケーションを取ることもなく、仕事終わりに飲みに行ったりすることはないので、なんだか寂しくなったりもする。

 

 

仕事のことはそのくらいしか訊けなくて、仕事のことで悩んでいない人なんて一握りだろうから、美鈴さんが仕事で悩んでいることを聞いて、職場とは関係のない人間に仕事の愚痴を吐き出すことで少しは楽になってもらい、そのついでに「この人にはもっといろんなことを話したいな」と思ってくれたら嬉しいな。まだ難しいか。私は仕事のことで悩んでいないので(なんて幸せなことか!)、同じ悩みを抱えているね、と共感するのが難しい。でも営業時代の時の記憶を引っ張り出してきて、そういう話をすれば、少しは共感とかできたりするのかな。どうなんだろう。

 

 

仕事のことはそこまで話さなくて、話題のメインは二人の共通言語である音楽になる。音楽が生活の一部になっている美鈴さんは、穏やかでのんびりした音楽が好みで、シンガーソングライターを聴くことが多い。私はあいみょんくらいしかまともに聴いたことがないので、もう少し広範囲に音楽を聴いていった方がいいよなとか思う。私と美鈴さんは同年代なので、学生の時に聴いていた音楽がほぼ一緒で、アジカンとか、バンプとか、そういった青春の音楽で会話が盛り上がる。美鈴さんは音楽好きな友達からいろんなアーティストを教えてもらい、それで音楽をよく聴くようになった。その友達から教えてもらってどんな音楽を聴くようになったんですか?と質問すると、何組目かのアーティストで、私が敬愛するロックバンドの名前が出て、「えっ、本当に?嘘ー!」と嬉しくなり、そこで頭がバグった。その辺りから私の記憶はだいぶ曖昧になる。美鈴さんがそのバンドを知ってて、何曲か好きな曲があるという事実が嬉しくて、それはそのバンドのことを知ってても曲まで聴いている、それも好きだという人にこれまで生きてきて会ったことがなかったので、私の頭はバグった。多分そこから、音楽のことについて私は饒舌に話し始めてしまったと思う。冷静になって思い返してみると、なかなかに一人語りなところがあって、目を当てられない。それなのに、一人だけ気持ちよくなっているのに、それに対して優しく相槌を打ってくれたり、「こうですよね?」と適切な返事をしてくれたり、改めて美鈴さんは聡明で思いやりのある、素敵な女性なんだということを再確認した。

 

 

夢中になって話していた。主に私が話題を振り、それに対して二人で語り合う。私が彼女に質問をして、それに対して彼女が興味深い話をしてくれる、それをうんうんと頷きながら聞く。でも気付いたら私が話している時間が長くて、それは家族以外の人と話す機会がここ1年以上は本当に少なくて、しかも美鈴さんは私が興味を持っていることに関してはほぼほぼ興味を持っていて(無理にそう振る舞ってくれたのかな?)、だから私はいつもの自分、無口で暗い自分からは逸脱して、まるで話すことで自己表現するようなタイプの人間になってしまっていて、それをちょっと気持ち悪いと思ってしまった。うう。

 

 

夢中になって話していたが、ちょっと喉が疲れてきたな、と思い時計を見たらお茶をし始めてから2時間半弱が経っていて、え、うそ、と思いながら、それでもまだまだ話し足りないことばかりのようで、でも流石にこんだけ話しているとお互いに疲れてくる。初めは笑顔が溢れていた美鈴さんも、ちょっと目を凝らしてみると疲れの色が若干現れていて、「お手洗いは大丈夫ですか?」と声を掛けて、美鈴さんがお手洗いを済ましている間に会計を済ませる。美鈴さんがお手洗いから戻ってきて、財布を取りだすので、「もう会計は済ませましたので、行きましょう」と言って店を出る。「今度お茶するときは、私が出しますね」と笑顔で話しかけてくれる美鈴さん、やっぱり天使じゃん...、としみじみ思いながら駅へと向かう。

 

 

実は次回のお茶の約束は喫茶店にいるときにしていて、そろそろ店を出ようかというタイミングで「今日むっちゃ楽しかったです。もしよかったら、またお茶しませんか?」と言い、「もちろんいいですよ。行きましょう!」と美鈴さんが返してくれるので、日にちだけを決めた。次は彼女が住んでいるところ付近で、彼女が前々から気になっていたけれどなかなか行けずじまいの素敵な喫茶店に行きましょう、ということになった。駅までの帰り道、「ここ、本当に素敵なところですよね。素敵な喫茶店があったり、興味深い個人経営の本屋さんがあったり。こういうところに住むと、毎日が楽しいんだろうな」と嬉しそうに話す美鈴さん。私が美鈴さんを良いなと思うのは、彼女は基本的にマイナスなことは言わない、それはまだ関係が親密でないからそういった愚痴を零しても相手に嫌われてしまうという彼女の考えもあるのかもしれないけれど、ほぼほぼ笑顔で、明るいことを話している姿勢、考え方、そういう風な人は一緒に居ても疲れない、寧ろ一緒に居て元気を貰うんだろうな、いいな、彼女とこれからの生活で一緒に過ごすことができたらいいな、なんて甘い考えを転がしていた。

 

 

改札前でお別れした。「今日は遠くまでわざわざありがとうございました。今度は美鈴さんのところでお茶しましょうね。とても楽しかったです」「私こそ、とても楽しかったです。お体には気を付けてくださいね」と言って、別れる。改札を抜けて、美鈴さんが一度振り返ったので手を振る。手を振り返すことはしなかったが、優しくお辞儀をするその感じも好きだった。

 

 

ぽわぽわとした頭で家に帰って、早く家を出ないと次の予定に間に合わないんだけれど、でも先ほどの美鈴さんとの時間があまりにも素敵で最高で、生きてて良かったと思っている。こういうボーナスタイムに巡り合うために、日常を頑張って来てよかった。美鈴さんの「またお茶しましょう!」がどうか、お世辞でありませんように......。