眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

彼女はノンセクシャルだった。そして振られた。-前編-

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彼女との恋愛が終わってしまう日が近いうちに来てしまうだろうことは薄々分かっていたような気がする。けれど、それは今日ではない、もう少し先の未来だと思っていた。

 

 

土曜日の17時前、新宿の大好きなラーメン屋さんに来ていた。2カ月ぶりのラーメンに私はどきどきしていた。ラーメンが運ばれる前に何気なくスマホを見たら誰かからLINEが来ていた。彼女からのLINEだった。元々は先週の土曜日の家デートでの彼女の態度にイラッとした私がLINEでつい零してしまった「これって付き合っているのかな?」というメッセージに対しての、1週間かけての返信だった。ちなみに、このLINEの前に私は彼女に対して思っていることを全てさらけ出したメッセージを送った。そしてそれを、後に後悔することになる。

 

 

(私)さんの気持ちは十分伝わりました。
(私)さんは素敵な人だし好きだなって思っていたから、(私)さんに告白してもらって嬉しかったから付き合ったの。
でもね、出会って1ヶ月くらいで付き合ったのは初めてで、まだ気持ちがついてきていないみたいです。
(私)さんと同じほどの気持ちを返せていないのがとても申し訳ないし、将来のことをきちんと考えている(私)さんとこのままだらだら付き合うのは申し訳ないと思えてきて。

 

正直なところ、(私)さんといる時間も楽しいんだけれど、仕事とか友達とか家族、そして自分一人の時間も大切で、恋人との距離感の価値観が(私)さんとは合わないと思います。

 

このまま付き合っていってもたぶんどこかで関係が破綻してしまうと思うの。ごめんなさい。

 

 

彼女からの文章の大意はこんな感じだった。文章を読み終えて、ちょうどラーメンが運ばれてきた。塩の、とてもさっぱりしたいい匂いが鼻孔をくすぐったが、私の食欲は完全に失せてしまった。これって要するに、つまるところは「別れましょう」ということなのでしょうか。そうだよね、どこをどう読んでもそうとしか受け取れないよね。この文章を読んで、「次のデートはいつにしようかな。どんなデートだと彼女は喜んでくれるかな」と考える阿保はいないだろう。そうか、そうなのか、え、本当にそうなの?彼女は別れたいとずっと思っていたの。そんな素振り、一切なかったよな......、と断言できるほど、私は彼女から好意を感じ取れてはいなかった。会話を切り出すのは大体私からだったし、彼女から「(私)さんのことが好き」と一度も言われたことはなかった。ボディタッチもなかったし、もちろんキスもしなかった。まだ3ヶ月だし、彼女は控えめな感じだからそんなものなのかな、と思っていたけれど、それは私との価値観のずれで、デートをしているときも心のどこかでは、(別れたいな...)と思っていたのかな。そうだとしたら、この3ヶ月の私の感情はとんだ馬鹿馬鹿しさを孕んでくるし、そういう思いがあるのならさっさと伝えてほしかった。そういう思いって、付き合って1ヶ月とかでだいだい分かるものなんじゃないの。でもあれか、そもそもコミュニケーションを全然取れていなかったから、そこまで考えられるほどの経験値が溜まっていなかったのかもしれない。

 

 

せっかく楽しみにしていたラーメンだったのに、殆ど味が分からずに気付いたら食べ終えていて、放心状態で駅まで向かった。歩いている途中で出くわすラブラブなカップル、そのカップル全員が心の底から幸せではないのかもしれないけれど、でも恋人とそういう風に触れ合えているのが羨ましかった。でも羨ましさよりも、「これで彼女との恋愛が終わってしまうのか」という気持ちの方が強くて、どうやって家まで帰りついたのかあまり憶えていない。

 

 

気付いたら家に帰っていた。 何もする気の起きない精神を大事に抱えながら、どうしたものか、ここから「別れないで、付き合いを継続させる」ことはできるのか、恋愛経験が乏しい頭で全力で考えてみた。彼女が私と別れたい一番の理由は「恋人との距離感の価値観」にズレが生じているからなのか。それなら、私が努力すればなんとかなるものではないだろうか。ネットで恋愛に関することを漁っていた時、とある人がこう言っていた。

 

 

「恋人との距離感の価値観が合う人と付き合うのは楽でしょう。でも、価値観が合わない人とどのようにしてうまく付き合っていくのか。きちんと話し合いをして、お互いの妥協点を探って、そこで頑張ってみるのが大人の恋愛、成熟した恋愛なのではないでしょうか」

 

 

 

上記の文章を読んだときは、(ふ~ん)としか思わなかったけれど、精神状態がぎりぎりの私は藁にも縋る気持ちでその言葉を真に受けた。でも、心のどこかでは、恋人との距離感の価値観が合わない人とはどこかで無理が生じて、関係が破綻するのではないかと思っていた。

 

 

18時過ぎ。1時間前にあれだけ重たいLINEを送ってきたということは、彼女は今日、おそらく一人で一日中のんびり過ごしているか、それとも友達との約束を終え、一人でのんびり過ごしている可能性が高かった。なので、駄目もとで彼女に電話をした。電話が繋がって欲しい気持ちもあったし、繋がったら繋がったで自分の気持ちを冷静に伝えて、あなたとは別れたくないと説得できるかどうか不安な気持ちもあった。電話は繋がらなかった。20分ほど間を空けて、

 

 

「文章だけだと伝わらない部分があると思う。だから、最後に話しませんか。話すことすらも嫌であるなら、私はもうあなたとの関係を諦めます。寂しいけれど、諦めます」

 

 

というLINEを送った。既に彼女にブロックされている可能性もあったし、あんなLINEを送られていたので、彼女から返信が来ることは期待していなかった。いや、少しは期待していた。でもそれは高額の宝くじが当選するくらいの確率で、夢は少しだけ見るけれど、どうせ当たらないんでしょうというほぼほぼ諦めの強い期待だった。

 

 

20時を過ぎても彼女から返信はなかった。終わったのか、彼女との関係はもう終わってしまったのか。諦めかけていた22時過ぎ。そんな時間まで起きていることは稀な、というか多分毎日21時には寝ているそんな彼女から、一通のLINEが届いた。そのLINEの内容は私の想像を遥かに超えるもので、その文章を読み終えたあとはただただ茫然としてしまった。