眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

多分、別れることになる

今日も2時間ほどの残業をした。在宅勤務が増えてからというもの、出社するたびに残業をしている。私が所属している部署はいまだに紙ベースで仕事を進めているので、在宅勤務でできる仕事の範囲に限界がある。それでも会社の意向は、「出社率を7割削減する」というもので、出社しないとできない仕事がたくさん残っていても、在宅勤務をしなければならない。コロナが蔓延し始めてから1年以上も経っているんだから、そろそろペーパーレスに対応してほしいけれど、それを完璧にするには膨大なコストと時間がかかるのだろう。

 

 

仕事中はほぼほぼパソコンのディスプレイを見ていたので、目がとても疲れていた。週初めの仕事だったので(昨日は在宅勤務)、疲れやすい体になっていた。くたくたの体を電車に押し込む。ずっと仕事に集中していたので、外の世界の情報を頭に入れたかった。スマホの電源を入れ、どうでもいい情報を流し読みしていたらLINEのメッセージが表示された。

 

 

「お疲れ~」

 

 

彼女からだった。最近は夜にLINEを返すと、次の日の夜にLINEの返事が来る。中途半端な連絡をするくらいだったら、もういっそしないほうが私の心は荒れないんだけれどな。その後に表示されたメッセージで、私は苛立ってしまった。

 

 

「今度会うって話してたけど、実家に帰る準備を早めにしたくて。会うのは今度の機会にしない?」

 

 

は?なんなん?もういったいなんなんだよ?と疲れ切って心に余裕がない私は、彼女に対して今までで一番苛立っていた。いやいや、この間会った時は、私と会ってから実家に行くって言ってたじゃん。準備を早めにしたい?明日実家に行くとかなら分かるよ。でも実家に行くの再来週の土曜日じゃん。なんなん、ちょっと舐めすぎじゃないの?もしその日に会わなかったら、私たちが次に会うの1か月後ですよ。それって付き合っているっていうんですか?

 

 

家に帰ってから、今まで我慢していたことは本当は我慢しなくてもいいことに気付き、今まで我慢して彼女に付き合っていた自分の事が可哀想に思えてきた。私は恋人とは最低でも週に1回は会いたくて、土曜日か日曜日のどっちかにどっぷりと会いたくて、それに加えて平日の仕事終わりに夕飯を一緒に食べたい。電話はそんなに長くなくてもいい、10分とかでもいいから2日に1度くらいはしたくて、LINEもどうでもいい内容でもいいから1日に5往復くらいはしたいと思っていた。恋人ができたらそんな生活がやってくると思っていたんだよ......。

 

 

彼女は非常に淡白な人だった。付き合い始めて2ケ月が経つけれど5回しかデートができていない。デート終わりに、「次いつ空いてる?」と訊いても、「う~ん、2週間後かな」と平坦な口調で返される。面倒くさい男だと思われたくないので来週の休日はどうしているの、とは聞かない。どうせ友達と遊ぶんだろ。デートの頻度が少ないことに不満を持っているけれど、それに加えてデートの時間の短さにも苛々していた。短期間に繰り広げられるデートなら短時間でもいいけれど、せっかく2週間ぶりに会ったんだからさ、もうちょっと一緒に居たいと思わない、のかな。この間のデートは昼ごはんと喫茶店をそそくさと済ましたので、ちょうど2時間で終わってしまった。「もうちょっと遊ばな......」と彼女の声をかけようとしたら、既に彼女は改札の中に居て、ばいばい、と手を振っていた。

 

 

電話も出来ない。そもそも生活のリズムが合わない。彼女は朝の5時に起きて、夜の9時に寝る(本当かどうかは知らないけれど)。だから、仕事が終わり、家に帰って一段落ついたところで彼女と話そうと思っても、大抵は夜9時を過ぎていることが多くて、電話をかけても虚しくコール音が部屋に鳴り響くだけ。彼女と連絡が取れない。多分、彼女がいなくなっていても、私は気づかないんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え、こんな生活がずっと続くの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無理無理無理無理、こんなのもう耐えられないよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな生活を続ける体力は私にはない。彼女は良い子だ。だからこそ、ずるずると我慢していた。でも今回の件でようやく踏ん切りがつけそうだ。彼女と私は、いろんな面で価値観が異なるし、生活リズムが圧倒的に異なる。これ以上付き合いを続けても、二人の間を隔てている溝を埋めることはできない。彼女はこの2カ月で私に近づいてくれる努力をしなかったので、これからもしないだろう。付き合いたてが恋愛で一番楽しいというのに、その期間が全然楽しくない、むしろ苦痛で仕方がなかったということを深刻に受け止めるべきだった。

 

 

明日の夜、彼女に電話をして、今まで私が抱いていた不満を伝える。不満が簡単に解消されるはずがない。私がああだこうだ言ったとしても、彼女は友達と遊ぶ時間をたくさん確保するだろうし、平日はすぐに寝てしまうし、LINEの頻度はもっと少なくなるし、もしかしたら会うことすらできなくなるかもしれない。もういいんだ。もう別れたい。そう考えたらすっきりとした気持ちでいることに気付いた。いつまでも私の方を振り向いてくれない相手に執着することほど、切ないことはないよ。