「尾崎世界観の日 全国ツアー」は2回目の参加となる。正直、行けるとは思っていなかった。でもどうせ名古屋に帰省するんだったら観たいな、と思って軽い気持ちでチケットを買ったら買えた。あっけなかったし、こんな簡単に入手できていいものかと戸惑った。でもチケットが取れて、行きたかったので、難しいことは考えないで素直に行った。
コロナが酷くなっている状況なので、参加を断念した人もいることだろう。でも私の席から観た限りでは、席はほぼほぼ埋まっていた。前回の渋谷でのライブの時も一席空けることなくぎっちぎちに席が埋まっていたが、それは東京仕様ではなくて全国仕様なのだということを、名古屋公演でも知った。まあ、隣の人がそこまで気になる人ではないのでよかったのですが。
渋谷での席は2階の前の方だったが、大きなホールだったので、尾崎の表情がうっすら視認できるといった状況だった。今回は1階の前後左右ほぼほぼ真ん中の席なので、尾崎の表情はくっきり見えた。昨日もここの会場に訪れたのだが、今日のホールは昨日よりも小さなホールのためか、どこから観ても尾崎の表情をしっかりと観ることができただろう。
前置きはこの辺にしておく。先日、名古屋でも緊急事態宣言が発令されることになったので、今日の公演は中止になってしまうのではないかとヒヤヒヤしていた。それでも無事開催して頂けて本当に感謝しています。こんな状況でも怯むことなくライブをしてくれることは音楽業界にとって希望でありますし、ライブがないと生きていけないような、私のようなライブ廃人にとっても希望なのです。開催してくださり、本当にありがとうございます。
グッズ、渋谷の公演の時に「酒飲んで酔っ払ってそのまま朝になるまで」Tシャツ(2,800円)を買ったので(ロンTは売り切れていました...)、今回は見送るつもりでした。開演ぎりぎりに会場に到着したので、お目当ての品は売り切れているだろうと思っていたら、ぎりぎり残っていたので(多分、あと2,3個しかなかった)、ここで買わなかったら多分後悔する、買って後悔するのと買わなくて後悔するのとでは前者の方がええじゃろ、ということで、勢い余って「尾崎世界観の部屋」ロンT(3,300円)を買ってしまった。今のところ後悔はしていない。一週間後に、このロンTを観て、「これを買わなければライブに1本行けたのに......」と後悔するかもしれないが、それはもう仕方のないこと。アーティストに対するお布施だと思い、もう忘れてしまいましょう。
いつまでもライブ前のことでぐだぐだしていたくないので、さっそく本題に入る。前回の公演で尾崎の弾き語りの前にクリープハイプのメンバーが演奏するくだりは知っていたし、私はそのぶぶんに関しては「微妙かな、申し訳ないけれど」と思ってしまったので、そのぶぶんの感想は割愛する。その時間を尾崎の弾き語りに充ててくれたらよかったのに、と思ったが、尾崎は17曲も歌ってくれたので、このバランスがちょうどよかったのかもしれない(多分)。
長谷川カオナシと小川幸慈・小泉拓 (門出船出)のライブは約30分で、その後10分の機材調整を挟み、18時10分から尾崎が満を持して登場。出てくるときの歩き方から既に尾崎が滲み出ていて、この独特の雰囲気を醸し出せるのは尾崎しかいないんだよな、本当に唯一無二の存在だよなと再認識する。すぐに曲を始めるのではなく、ぽつりぽつりと、そこまで熱心に話すわけではないけれど、普段から思っていることを話している尾崎を観ていると、「こういう時間を今まで私たちは奪われていたんだよな。この時間はライブに行かないと味わえない、本当に貴重な時間だよな」と思いながら、でも内容が尾崎がインスタに上げた内容に対する一般人の揶揄(鍼灸で首のあたりに痣が出来ていたのを、「キスマだー」と言われる)を一蹴するという、なんとも尾崎らしいエピソードでついついのんびりしてしまう。笑いもそこかしこで上がるくらいに和やかな雰囲気のなか、1曲目に演奏されたのが「自分の事ばかりで情けなくなるよ」で、(いきなり重たっ)と怯んだが、聴き終わる頃には、(えっ、あとこの時間が16回もあるのかと思うと、ちょっと贅沢過ぎやしないか?)と嬉しくなる。まだライブは始まったばかり。
全部で17曲を演奏、途中でMCを挟んだ約2時間のライブだったが、一瞬も気を緩めることの出来ない、ずっと集中していられるライブだった。まず選曲が素晴らしい。前回、渋谷の公演のときには存在すら知らなかった曲(「喋る」「百日紅」「ハロー」「風邪をひく日」)があって、その曲の演奏の時は(う~ん)となっていたけれど、今回はちゃんと予習したし、ライブで聴くのは2回目になるので、その曲を演奏しているときはすごく気持ちがこもった。特にYUKIに提供した(そんなことすら知らなかった)「百日紅」がすっごくよくて、女性目線の歌なんだけれどちょっと涙ぐんでしまった。なんでこんな素敵な歌を作れるんだよ、頭のなかはいったいどんな風になっているんだよ、と気になってしまう。尾崎がMCで「同じような曲調の曲ばかりで飽きるでしょ。弾き語りでいろんな曲調の曲を作れる人がいるけれど、あれ、絶対多重人格でしょ」(いつもの悪口にホッとした)と言っていたが、同じ曲調に感じられる曲もあるにはあるけれど、全然飽きることなんてなかったよ。
以下、特に気に入った曲の感想。
「ボーイズENDガールズ」
クリープハイプのアルバムで一番好きな「一つになれないなら、せめて二つだけでいよう」(2014)のなかでも特に好きな曲。弾き語りでも曲の世界観をしっかりと描き切れていて、弾き語りだからこそ鬼気迫る表現になって、演奏の間中ずっとぼおっとしていた。弾き語りバージョンで音源化してほしいくらいに素晴らしい演奏だった。
「四季」
音源を初めて聴いたときは、(う~ん、そこそこかな)という感想。でも何度も聴くごとにどんどん好きになっていき、だからこそ今回の弾き語りで演奏してくれて本当に嬉しかった。軽快なリズムに乗って曲が進んでいくの、聴いててとても気持ちいいし、弾き語りでもその印象が消えることは無かった。ライブの5曲目にさらっと演奏してくれるの、本当に好き。この間のフェスでは披露しなくて、今回の「尾崎世界観の日 全国ツアー」だけでやってくれている理由を考え出すと思考が止まらなくなってしまい眠れなくなるので、深くは考えない。好きな曲が増えて嬉しい。次はバンド編成で聴きたい。
「誰かが吐いた唾が キラキラ輝いてる」
弾き語りにはうってつけの曲だけれど、この曲を持ってくること予想していなかった。今までそこまで神妙に聴いたことはなかったけれど、今回のライブでとても気になる曲になった。
「百日紅」
YUKIに提供した曲。 こんなにも素敵な曲をさらっと他人に提供してみせる尾崎に脱帽。渋谷のライブのときは歌詞を間違えて、「他人の曲だから、しょうがない。いや、しょつがなくはないか」と言っていて、今回は間違えずに演奏してて、歌詞とか曲調とか本当に素晴らしくて、ずっと泣きそうになりながら聴いてた。尾崎世界観の日にしか聴けない、とても貴重な曲。また聴きたいな。
「大丈夫」
「一つになれないなら、せめて二つだけでいよう」(2014)のなかで一番くらいに好きな曲。この曲のような彼女がいたら、私はきっとなんでもできるような気がするだろう。軽快なリズムで、跳ねるように歌っている尾崎の姿が印象に残っている。
「exダーリン」
「最後にちゃんと残して帰ります」と話してから演奏された曲。1stのボーナストラックで、弾き語りで地味だなと思って素通りしてきた曲。渋谷のライブでこの曲を聴いて震えたので、音源を繰り返し繰り返し聴いて、この日に臨んだ。たくさんの曲を聴き、頭がぼおっとしている状態でこの曲を聴いて、いろんな複雑な感情がどばっと溢れ出て、絡み合って、解けなくて、もうどうしたらいいのか分からなかった。絡まったままで、解かなくてもいいのだと知った。ずっと聴いていたかった。
笑った時鼻をすする癖が 今でもまだ愛しい
のぶぶんを歌い終えて、尾崎の声がいつまでも私の胸の中に残っている、今も。
クリープハイプのライブも最高だけれど、尾崎世界観の弾き語りのライブも最高で、要するに尾崎世界観は最高のミュージシャンだった。「今度はバンド編成で戻ってきます」と言い残してステージを去った。今年中にクリープハイプでツアーが組まれることを期待してもいいですか?
こんなしんどい時だからこそ、ぽっと心を温めるような彼の歌に、声に癒されたライブでした。
<セットリスト>
長谷川カオナシ
01.火まつり
02.のっぺらぼう
03.星にでも願ってろ
04.しらす
05.ごめんなさい
小川幸慈・小泉拓 (門出船出)
01.こりゃめでてぇ
02.インスト
03.インスト
尾崎世界観
01.自分の事ばかりで情けなくなるよ
02.ボーイズENDガールズ
03.5%
04.(新曲)
05.四季
06.誰かが吐いた唾が キラキラ輝いてる
07.キケンナアソビ
08.喋る
09.ねがいり
10.百日紅
11.ハロー
12.大丈夫
13.風邪をひく日
14.傷つける
15.マルコ
16.イノチミジカシコイセヨオトメ
17.exダーリン