眠たげな猫の傍で

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世界の果てで眠っていたいな

ロロ 『いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校』@アトリエ春風舎

コロナが世界を覆うようになって、劇場で演劇を観る機会が少なくなった。というか、ほぼほぼゼロになった。去年はロロの演劇を一度だけ観ることが叶った。

 

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今年になって悪い芝居が演劇をしていたが、都合が合わなくて行けず、だから今回の観劇は去年の9月ぶり、およそ7カ月ぶりである。なので観劇しているときはどんな風に心が動くのだとか、観ているときはどんなことに注意しているかだとか、そういったことはすっかり抜け落ちしてしまっていた。

 

 

本日をもって3回目の緊急事態宣言が発令された。そのため、今日の演劇は中止になってしまうのではないかと冷や冷やしていた。今回の演劇は29日(木)まで開催されるのだが、最後のほうが敢え無く中止になってしまい、なんというか、ぎりぎり観ることが叶って嬉しいけれど、今回の演劇を観れない人もいるし、最後まで続けることの出来なかった劇団員の無念さを思うと、もう腹が立って仕方がない。でもそんな負の感情を持ち込んだところで誰も良い気分にはなれないし、そういった感情は他の偉い人々が発信していると思うので、私はこの辺りにしておきます。

 

 

loloweb.jp

 

『いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校』はロロ旗揚げ一年目に書いた作品です。僕が10代のころに読んだり観たりしてきた漫画、アニメ、ライトノベルへの愛情を目一杯詰め込んで書いたボーイミーツガールの物語で、これまで何度も再演を重ねてきました。「独白」と「対話」の間にある「告白」について考えるきっかけになった作品でもあります。でも、現在の僕はこの物語をかつてのように肯定することができません。当時の僕と今の僕とでは恋についての考え方が随分ちがっていて、ここで描かれる男性や女性の姿にどうしても違和感を抱いてしまいます。今回の上演で、その違和感にとことん向き合ってみようとおもいます。かつての自分が書いた言葉に今の自分はどんな風に応答できるのか。オーディションを通して新たに出会った俳優たちとじっくりと考えてみます。

脚本・演出 三浦直之

 

 

こんな文章が公開されていたら、期待値がぐんと上がってしまいますよ。私は初期のロロを知らないので、今回の劇がどんな感じなのかは全く知りません。でも、三浦直之さんならば、どうせ初期からすんごい演劇を作っていたんだろうなということは簡単に予想がつきましたし、だからこそ、今日という日を迎えられて本当に幸せなのです。

 

 

チケットが良番だったので、一番前の席で観ることが叶ったのですけれど、劇が始まってすぐに、「そういえば演者と観客の距離はこんなにも近かったのだ」ということを思い出しました。一番前の席だったので余計近くに感じられたのでしょうが、こんなにも近くで観ていると、まるで自分の舞台の中に溶け込んでいるような気がして、それはそれは奇妙な感覚に陥りました。

 

 

演劇のタイトルからも分かる通り、三浦直之はおそらく小沢健二が好きなのでしょうし、メインの役を演じる門田宗大が羽織っている透明の服に印字されていた「好き好き大好き超愛してる」から、舞城王太郎が好きなことも窺えます。ただ、今回の劇に舞城王太郎っぽさが含有されていたかどうかは、最近彼の作品に触れていないのでちょっと分かりませんでした。ただ、好きなミュージシャン、好きな作家が散りばめられている演劇がつまらないわけなくて、ずっと集中して観ることの出来た75分間でした。

 

 

物語の始まり、六(門田宗大)がトビ(高野栞)に告白する場面からすぐに舞台上で行われていることに釘付けになって、それはずっと続きました。テンションが高すぎて少々追いつけないぶぶんはありましたけれど、物語の途中途中で挟み込まれる動き、それは練習して身につけたものなのか、それとも即興的に成せる技なのかは知りませんが、それがとても魅力的で、「ああ、動きを堪能することが演劇の醍醐味であるよな」としみじみ思いました。

 

 

演劇をしているのは勿論生身の人間なので、ぐっと視線を体の端々に集中させると、そこには意識しえない動きが働いていて、それは演者自身も意識していない「素」の動きなのでしょうけれど、そこまでしっかりと役が作りこまれていて、演劇における身体性の重要性を痛感させられました。一つひとつの動きにはきちんと意味が織り込まれており、それを意識することで劇の奥行きがぐっと深まっていき、どこまでも物語が続いていくように感じられました。

 

 

惚れやすい六は謎の転校生である空(ろう)(金井美樹)に一目惚れしてしまうのですが、金井美樹という女優さんの演技が今回の演劇で一番印象に残っています。転校し始めの頃はツンと澄ました表情で同級生を寄せ付けないのですが、六と親しくなっていくうちに見せる懐っこい笑顔が本当に素敵で、勿論笑顔だけじゃなくて演技のそれぞれも素敵だったのですが、それを観ているうちに、「ああ、演劇ってこういう出会いがあるからやめられないんだよな」と嬉しくなってしまいました。この方の経歴を後で調べてみると、映画「幕が上がる」(2015)に出ていたそうで、もう一度映画を観返してみようと思うくらい、今日の演技が本当に素敵だったのです。

 

 

話自体は、ロロの初期だからなのか少々粗削りぶぶんはありましたし、先生(関彩葉)の演技が過剰であることは否めませんでしたが、最後の、光を象徴的に使用するところからぐっと話のテンポが素晴らしくなって、最後には「ああ、もうこれで今日の舞台は終わってしまうのね......」と寂しくなるほどには、満足のいく観劇でした。こんな時期にも関わらず、観客席には満員のお客さんが詰めかけていて、こんな事態だからこそ演劇が求められているのだよな、私も少しは演劇を支えられたらな、と思いました。

 

 

ロロの次なる舞台は、最近御馴染のいつ高シリーズで、6月下旬に新作を上演予定だそうです。それまでには緊急事態宣言も解除され、新型コロナの感染も落ち着いて、安心して劇場に足を運べる世の中になっていたらいいな、それはちょっと甘いかな、でもまだまだ予断を許さない状況が続いていたとしても、私の体は演劇を求めていて、演劇で得られる刺激は演劇でしか味わえない、他の物で代替することが不可なものであることを改めて思い知りました。

 

 

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