眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

2021年4月5日(月)

新しい革靴をおろした。明日の、彼女とのデートのためにきちんとした身なりをしようと思ってのことである。明日は新調したスーツ(3ヶ月前に買った)でびしっと決めて、彼女に会おうと思う。約一週間ぶりの彼女との邂逅、楽しみでしかない。でもそこまで久しぶりという感じがしないのは、昨日電話でたくさんお喋りしたからだと思う。電話から聞こえてくる彼女の声、本当に可愛くて、ずっと聞いていた気分だった。私の声はいらなくて、ずっと彼女の話を聞いていたかった。可愛いは正義である。

 

 

この2日間の休みは休みにならなかったので、先週の仕事の疲れを引きずりながら会社へと向かう。在宅勤務をやめてしまった会社が多いのか、朝の電車は鮨詰めでどうにかなってしまいそうである。電車を降りて改札を抜けようとすると、毅然とした態度のリクルートスーツを着た女性、おどおどしたスーツ姿の男、それを囲む二人の駅員。女性は茹で蛸のような顔をして、必死になって主張していた。私はそれを横目に見て、颯爽と改札を抜けた。

 

 

会社に着く。今日はとことん忙しい日なのでフルメンバーかと思ったが、井戸端さんは欠員だった。明後日が中学歳の娘の入学式で休むと言っていたが、どうして今日は休んだんだろう。仕事が始まって、先週の金曜日の続きをえんえんとこなしていく。倒しても倒しても何度でも復活するラスボスのように、私の目の前に横たわっている仕事はしつこかった。何度も必殺技を繰り出して疲れてしまった私は、体力を回復させるためにそこまで甘くないけれど美味しい飲み物をちびちび飲んで、くたくたになって殆ど融通の利かない頭が少しでも回転するように仕向けた。午前中はずっと仕事に集中してて、去年の今頃も結構忙しかったのだろうけれど、去年に比べて仕事の量や質が変わっているので、なかなかに大変な時期になったもんだとつくづく思った。午前の部が終わり、外に出て高いご飯を食べる元気もなかったので、スーパーでチーズパンとチキン南蛮バーガーを買って、それを昼飯とした。チーズパンのパンはフランスパンで、きちんとした製法で作っているからか美味しくて、もう何度もリピートしているのに一向に飽きが来ない。チーズがしつこくないというのもミソなのだろう。チーズパンがあまりにも美味しくて、美味しい美味しいと思っていたチキン南蛮バーガーが若干の見劣りしてしまっていた。昼飯を食べ終わり、だらだらと休みを潰す。マカロニえんぴつの、はっとりの声が私の疲れを溶かしていく。ライブではどんなセットリストで臨むのだろうか、出来れば去年の中止になってしまったライブで披露するはずだった「hope」の曲を存分にやってほしいと思っている。「愛のレンタル」とか聴いたら、泣き崩れてしまうかもしれない。そんなこんなで休みが終わる。もうここで帰っても私はよかった。仕事には飽き飽きしているんだよ。

 

 

午後も相変わらず仕事に忙殺された。でも厄介な仕事に追われているわけではないので、心には多少の余裕を漲らせながら仕事を進めていく。倒しても倒しても仕事はなかなか減らず、思わず(仕事の割り振りがおかしいのではないか)という、見て見ぬ振りをしてきた事実を思い出した。あと一人は今のチームには必要で、経費削減だかなんだか知らないが使えないやつをいつまでも雇っているのは非効率的だろ、と思ったが、いざ解雇をするとなったら経験の浅い私が真っ先に切られるのではないかと思ったが、それでもまあいいような気がしている。変化を好まない人間なので、そこまで悪い環境ではない現状から抜け出す気力がないが、外部の圧力で今の場所を抜け出すことができたら、新しい人生が待っているのかもしれない。生産性を感じられない、くだらない仕事に付き合っているくらいなら、答えがあるのかないのか、自分で創りだすしかないのかよー分からん仕事をしたい気持ちもないではない。ただそんな環境に自分から飛び込んでいく元気がないだけ。

 

 

定時を過ぎて本番だよ、といった雰囲気が流れていて、私、いつ帰れるの、さっさと帰りたいのだけれどという空気を出したが、周りの緊迫感にすぐにかき消された。派遣の女性と子持ちの女性は早々に離脱して、あとは新人とZ、コピーとおジイさんがいて、上司もしれっと帰っていった。上司が帰った後に上司の悪口が持ち上がらないのが、今のチームの利点というか、ただ単に度胸がないだけか。1時間が過ぎても2時間が過ぎても一向に帰れる気配がなく、(今日は会社にお泊まりか?)とちょっとだけテンションがあがった。私の仕事は既に片付いているので、別に帰ってもいいのだけれど、新人が残って、せっせと仕事をしているのに帰るのは憚られた。と思っていたが、彼らも実は帰りたくて、私がまだ残っているから帰っていないのかもしれない、という矛盾に気づいた。前を向くとコピーがいそいそと帰る支度をしてて、顔が完全に弛緩し切っていた。帰った。おジイさんに状況を聞いてみると、「23時半までかかるかもしれない」と言っていて、それは虚言の域に達していたので、3時間半の残業を納めて私も帰った。夜風が身に染みた。明日も寒いのだけれど、そして薄着のままで過ごしていたせいで水曜日には風邪っぽくなってはながたくさん出てしまうのだけれど、それはまた次の話である。

 

 

家に帰って、テキトーにご飯を食べて、というかはちゃめちゃにお腹が空いていたので調子に乗ってパスタ二束を茹でた。焦げた。茹で加減は最悪で、そしてお腹の減りも落ち着いたので、食事ではなく作業になった。膨れ上がったお腹を優しくさすりながら、イヤホンでマカロニえんぴつを聴いた。異常に疲れている体に注ぎ込むせいか、はっとりの声がいつも以上に良く聞こえて、疲れることで音楽をより楽しむことができるのだな、と悪い考えを見つけてしまった。24時を過ぎて、明日も多分忙しいから寝なくちゃいけないんだけど、昨日の彼女との電話を反芻してて、わたしの相槌、話の持って行き方があまりにも下手くそで、一方彼女は何でもないかのようにすらすらと素敵な話の流れに持っていけるのすごくて、彼女とたくさんお話をして私も素敵な話し方ができるようになりたかった。もっともっと、彼女とお話をしたいと思った。思ったんだよ。

 

 

3,465歩