眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

寂しいからスマホを手に取って

全てが終わってしまったかのような夜に寂しさを抱えて生きている。

 

 

忙しかった日々にもピリオドが打たれて、ここから新しく日常が始まるだなんて考えられないほど、私は今、一人で寂しさを抱えている。忙しいときには考える余裕はなかったけれど、私は一人であることをまざまざと実感させられる。東京で、唯一人と接することのできる場所である会社で、私は一人で黙々と仕事をしていた。周りに馴染めずに3年間を過ごしたあの高校生のときのように、私は今日も一人で働いていた。周りは楽しそうにお喋りをしながら仕事をしてて、ゆったりとした空気が流れていた。幸せそうな、でも裏では悪どい感情が渦巻いているそんな空気なんか知らないふりで、まるで一人で生きているかのように働いていて、これ、なんの意味があるの?と誰かに問いたくなった。私語禁止で、仕事の話ですら少しでもしていると上司が近づいてきて嫌味をチクチク言ってくるの、悪夢じゃなかったらなんだって言うんだろう。

 

 

仕事、頑張っても報われる気配がなくて、寧ろ頑張れば頑張るほどどんどん奥底へと沈み込んでいく感じ、どうしたらいいの。相談できる先輩、愚痴を溢せる同期、ありったけの知識を教えたい後輩はいなくて、周りは白黒の人間が訥々と働いて、働いているだけで、仕事なんて私の人生には関与していないの、と言わんばかりで、ああ、こんなんで人生が楽しくなるわけがないよな、ないんだよな、と虚しくなって会社を出る。

 

 

電車に乗ってても、スーパーで知らない人とぶつかりそうになっても、私はずっと一人で、家に帰ってようやく一呼吸つく。やっと本来の、生き生きした自分に戻れる気がする。彼女からLINEが入っていて、それに返信する。疑問形で返しても、返ってくるのは明日の夕方で、それに返しても返ってくるのは次の日。彼女は仕事がどちゃめちゃに忙しいのだろう。まるで新入社員研修の頃の私のようで、心配になる。新入社員研修で利益を創出する場所で仕事をして、朝5時に起きて夜の9時まで働いて夜の11時に寝る生活を半年続けて、なんで生きているのか分からなくなった。稼いだ金で、久しぶりの休日、なにをすればいいのか分からなかったし、何をする気も起こらなかった。ただただだるくて、精神的にも身体的にもだるくて、ああ、もう、これをあと40年も続けるくらいならいっそのこと......、と考えてしまうほどに私は追い詰められていた。そこから脱してもなかなか落ち着いた環境に辿り着くことはできず、休職を挟んだりして、いろんなところを転々として今の場所に辿り着けた。赴任当初は嬉しくて、でもすぐに思っているような環境ではないことに気づいて、ああ、現実はシビアだなと痛感した。

 

 

22時31分、木曜日、明日も会社に行って、でも特にすることもなくて、ならもういっそのことズル休みしてもいいんじゃないかな。正確にはズルではない、精神が疲れていて休むんだから、正当な理由なんだよ。夜に、こんなに寂しさを噛み締めていても、誰からも声が掛からないから、いてもたってもいられなくなってスマホを手に取って、次々に現れる刺激的な情報を飲み込んでは消化して、飲み込んでは消化しきれずにお腹をくだす。お腹の痛みに耐えられなくて、床に這いつくばって、声にならない声で訴えているのに誰も気付いてくれなくて、これ以上生を続ける意味とは......、と考えてしまうくらいに疲れているんだろう、さっさと寝ちまえよ。彼女から返信がない、私のことはそこまで興味がないんだろうか、ならもう付き合っている意味なんてないんじゃないの......、なんて女々しいことを考えるのは疲れているから。明日なんて来なければいいのに、いっそのこと......、なんて考えるのも疲れているから。さっさと寝ろ。つべこべ言わずにさっさと寝ろ。隣の喘ぎ声がうるさいなら、適当な音楽を耳に突っ込んで目を閉じろ。じきに寝るだろ。寝たら朝になってるだろ。ちゃんとご飯を食べて、朝の太陽を浴びながら30分も歩いていれば、それなりに世界は悪くないと思えるはずだ。だから今しなければいけないことは、目の前のスマホで文章を書いていることではなくて、さっさと布団に潜って寝ることだ。さっさと寝ろ。