眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

恋が駆け抜けていく

最後の彼女と恋人になってから、初めてのご飯。彼女は今日は早番のお仕事、そして明日はお休みということで夕飯を一緒に食べれることになった。場所は彼女の家から近い方がいいだろう、ということで彼女の家の最寄駅にした。何を食べよう何を食べようかと話して、パスタとかハンバーグとかいろいろ候補が上がったが、最終的には町中華になった。

 

 

18時前、私は彼女の家の最寄駅で待っていた。せっかく初めて来た街なのだからちょっとばかし散歩しようということで、早めに集合場所に着き、ぶらぶらと歩いてみる。駅の近くは飲食店がたくさんあって賑やかなんだけれど、ちょっと奥の方へ進むと住宅街、四方八方が家である。なんだか住みやすそうな街だなと思い、そろそろ集合時間が近づいてきたので駅前へと戻る。

 

 

集合時間の5分前に彼女から「もうすぐ着くよー」と連絡が来て、私も「もうすぐ着くよー」と返す。2分後、彼女は私の後ろ側から突然現れた。ああ、一週間待ち望んでいたこのふんわりとした存在。仕事で疲弊していたら一瞬で疲れが吹き飛ぶような素敵な雰囲気が漂っていた。彼女のホームだからか、彼女は自信がいつも以上に漲っていた。「いたー」と声をかけられ、「いたよー」と声をかける。すぐに店へと向かう。店までの数分間、久しぶりに会う彼女が発する柔らかい声で私はふにゃふにゃになってしまいそうだった。

 

 

店に着くとギリギリ私たちが座れる席があった。どれを食べよう、どれを食べようかと二人でメニューを眺めている時間の幸せたるや、筆舌に尽くし難い。「ここの餃子、美味しいんだって」ということで、水餃子とチャーハン、あとは適当に2,3品頼んだ。料理が届けられるまでの10分間くらい、私は久しぶりに見る彼女があまりにも可愛らしくて、もう蕩けてしまって原型をとどめられそうになかった。「お仕事お疲れ様」「お仕事お疲れ様」仕事と仕事の間の、束の間の休息での邂逅、幸せが溢れていた。

 

 

今日の2時間程度のお食事で彼女の事をより詳しく知ることが出来た。絶叫マシンが大好きで、ディズニーランドのスペースマウンテンですら怯んでしまう私は彼女を尊敬した。いつか彼女と富士急に行ってみたいと思う。4月から新しい体制で働くことになり、その体制表がご飯を食べているときに届き、食い入るように彼女はそれを眺めていた。「苦手な人と一緒だー」と嘆いている彼女、どうか苦手な人とそこまで苦手な体験をしませんように。この辺りにはラーメン屋さんが多くて、友達とこの間、家系ラーメンを食べたということ(ということは、デートでラーメン屋さんに行くことも出来るだろうか......)。海外にあるディズニーランドに行きたい、でもコロナが落ち着いてからじゃないと海外に行くのは難しいなー、ということ。もし新婚旅行がこの先の未来に存在しているとしたら、アメリカのディズニーランドに行ってみるのも良いのではないか。お兄ちゃんのお仕事のこととか、お母さんとお父さんの事とか。お兄ちゃんが自分の事をいつまで経っても子ども扱いすること。友達と予定が入っているから、当分の土日に会うのは難しいこと(難しいかー)。彼女は友達を大切にする子で、友達を大切にする子に悪い子はいないので、「なんで僕と遊んでくれないの?」なんて稚拙な駄々はこねない。そもそも、私もこの時期に彼女がいることを想定していなかったので、ライブの予定を入れているので、ちょうど良かったのだ(強がり)。夏休みは長い休みは存在しないこと。GWはお母さんとお兄ちゃんとどこかに行く、でもお兄ちゃんは絶賛仕事が忙しいので、現在進行形でどの日に遊びに行くのかまだ確定していないということ。だから、私と彼女がGWにいつ会えるのかは現時点では未確定であること。そうか、そうだよな。まだ付き合って1週間しか経っていないのに、そんな恋人は優先度は低いよな(弱気)。私がGWに地元に帰るかもしれないことを言うと、「えー、いいなー」と分かりやすく羨ましがる彼女、可愛さの権化であった。それと10数年前に私の父親が事故で亡くなったことを言うと、きちんと悲しがってくれるところ、そういう優しさが彼女の一番好きなところなのです。

 

 

一番きゅんとしたのは、「そういえば私達、まだLINEしか交換していないですよね。LINEが吹き飛んでしまったら、(私)さんと連絡が取れなくなってしまうのが怖くて。だから、電話番号を交換しましょうよ」と可愛い顔で見つめられて、もう何回私は彼女に惚れれば気が済むのだろうか、と思った。本当に可愛くて、息が止まってしまいそうになった。

 

 

そんな幸せを享受していた私であるが、恋仲になっているのに、もう5回目のデートなのに、まだまだ緊張していて、「おい、中学生か」と心の自分が思わず突っ込んできた。いや、今どきの中学生の方がませてますよ、だなんて心の自分に言う余裕はなかった。緊張、いつまで続くのか。彼女からふっと話題を振ってくれると、それを縦横無尽に、自分が喋り過ぎないように、彼女が楽しくなれるように適度に調節しながら話を進めていったが、沈黙の時間が来たとき、そんなときはなんでも話せばいいのだけれど、彼女が退屈してしまう話題を振ってしまったらどうしよう、と怯んでしまって、以前のデートでも話してしまったようなことをまた話してしまって、でも彼女は話し上手なので、なんとか場は盛り上がっていた。話し方とか、話題の選び方とか、一から勉強し直さなければならないな。

 

 

店、料理は美味しかったが、喫煙可であり、隣に座っていたチンピラ崩れの男2人組がスパスパ煙草を吸っていたし、まあまあな音量で話していたので、彼女には申し訳ないことをしたな、と思った。今度は静かな、落ち着いたお店に行こう。それでも、「この餃子、もっちもちしていてとても美味しいです」と笑顔で料理の感想を言う彼女を見ていたら、そんな些細なことは吹き飛んでしまいました。でも、がやがやしている場所では私の耳は引っ込み思案になってしまうようで、きちんとした音量で話してくれている彼女の声が聴き取り辛くて、私は難聴なのかしら、と本気で悩んでいる。

 

 

2時間ほど店で料理とお喋りを堪能してから、会計をささっと済ませて店を出る。彼女の家は駅から20分ほど歩いたとことにあるということ。駅で別れてしまうと今度彼女とじっくり話せるのはいつになるのだろうか、と不安になった私は、「家まで、一緒に歩いていいかな。もうちょっと(彼女)と話したくてさ」と何気ない感じで彼女に言った。「逆にいいんですか、私の家、ここから結構遠いんですけれど」「いいよ、今日は在宅で全然身体を動かしていないから、ちょうどいい運動になるよ」と言って、なんとか彼女との時間を延長することが出来た。ありがとう、駅から徒歩で20分の立地にある彼女の家よ。彼女の家までの道のりを歩いていると、綺麗な満月(ちょっと欠けていたけれど)と桜が良い感じに混ざっていて、素敵な空間を形成していた。20分ほどの散歩の時間、彼女は街のことをいろいろ教えてくれた。きつい坂があるので自転車で進むのはしんどいよー、とか、スーパーはあるけれどあまり安くないので、隣駅のスーパーを使っているよ、とか。こんな大きな高校があって、学校帰りになると素敵な学生服を来た学生さんがたくさん歩いていて、一瞬だけれど学生の気分に戻れるんだよ、とか。マスクをつけていて息苦しい私、ちょっとだけマスクをずらして彼女の話を聴いていて、幸せで、ずっとこのまま家にたどり着かなければいいのにな、と思った。20分ほどで彼女の家に着いた。次に会えるのはまだ未定だけれど、今日の、今の彼女の姿をしっかりと焼き付けておけば、なんとか生きていけるだろう。「ここまで送ってくださりありがとうございます。(私)さんも気を付けて帰ってくださいね」とばいばいしてくれる彼女、私も必死になってばいばいを返した。ばいばい、またね。さよならじゃないよ、またね。

 

 

駅までの帰り道、UNISON SQUARE GARDENの「MODE MOOD MODE」を聴いて、今日の事を思い返していた。幸せでしかなかった。2時間では全然話し足りない、もっともっと話していたかった。今度は長尺のデートをしたいけれど、まだ彼女の予定は確定していないので、なんとも言えない。彼女は今週の土曜日も出勤で、だから来週の水曜日は休みになる、だから来週の火曜日の夜にごはんはいかがですかという提案はあった。私の会社の経理チームは明日から、タイミングの悪いことに異常に忙しくなるので、どうかその忙しさが来週の月曜日までに落ち着きますように。そして飲食店で21時で閉まってしまうことにちょっとだけイラッとしたけれど、そもそもこんな時期に会って話すことがルール違反のような気がしているので、そこのところはぐにゃぐにゃできないところであった。

 
 
幸せをどんどん、積み重ねていく旅が始まる。