眠たげな猫の傍で

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世界の果てで眠っていたいな

B子さんとのデート

新しく婚活を始めて2回目のデート。今回は九州出身のB子さん。彼女の印象で一番強いのは、感嘆符や絵文字をたくさん使い、感情豊かに返事をくれるところ。私が中華料理を好きだという話をすると、「麻婆豆腐、愛してます!!」と、話したこちらが気持ちよくなるような返しをしてくれるところがとても好印象。反対に、同時進行で進めている他の女性と比べてLINEの返信はとても遅く、一日くらいの間隔が空くのが基本、長いと三日くらいかかるので、「息しているか?」とつい突っ込みたくなる。今の会社に入ってまだ間もなく、仕事が忙しいのに彼氏でもなんでもない、普通の人に返事をしている時間はないよ、と推測してみたが、LINEの返事が遅い理由は考えても仕方がない。どれだけ考えたところで本当の理由は分からない、ただ「返信が遅い、マイペースな人」ということだけを念頭におけばいい。余計なことを考えると疲れてしまうので、もうこれからは考えない。

 

 

というわけで、上記以外にもいくつかの好印象を持っていたので、デート当日は結構テンションが上がっていた。待ち合わせ場所に30分前に到着し、店の位置を確認し、B子さんが来るのをのんびり待つ。待ち合わせ時間の5分前に彼女らしき人を発見し、声を掛けてみるとB子さんだった。

 

「今日は宜しくお願いします」
「こちらこそ、宜しくお願いします」

 

と軽くやり取りをして、すぐにお店へ。店へ向かっている途中に、「昨日は何をされていたんですか?」と喫茶店に入って一番初めにしようと思っていた話題を振ってきたので、それに応える。同様にB子さんにも聞き、そうこうしていると店に着く。時間はちょっと遅いお昼ごはんくらいの時間に設定したので、お客さんの入りは60%ほど。1時間後に店を出るが、その時には10人以上が待っていたので、絶妙な時間にお店に入れてよかったと安心した。

 


席は周囲におしゃべりおばさん軍団や輩がいなく、一人客ばかりでそこまで気にならない。環境は上々だ。席に着き、どれにしようどれにしましょうか、と軽く話す。勿論コーヒーは飲まない。利尿作用があるということもあるが、コーヒーを飲むことによって口臭がきつくなる可能性があるので、迷わず紅茶を選択。彼女は喫茶店ではいつも頼んでいる、お気に入りのドリンクを注文。

 

「毎回同じものばかり選んで、私つまんない人ですよね」

 

と自分を軽く卑下する行為は1時間の会話のなかで何度も見受けられ、大袈裟に自虐することで会話を盛り上げようとする彼女の意志が感じられた。しかし、もしかしたら本当に自分を低く見積もっているのかもしれない。そう考えたのは、彼女が何度も転職を繰り返し、1つのところにじっとしていられないことによるということを教えてくれたことから発想を得た。

 


二度目のデートなのでそんなに緊張しないだろうと高を括っていた私は、初っ端からど緊張することに戸惑いを覚えた。寧ろ1回目よりも緊張している節がある。まだまだ経験が足りないということを痛感する。B子さんは終始笑顔で、こちらがついつい身構えてしまうような行為をしていないにも関わらず緊張してしまうのは、「彼女に嫌われたくない」という思いが強かったからだろう。頭では「きちんとした相槌をうたなくちゃ」と思っていても、うまく言葉が出てこない、言葉がすんなりと出てこないのは頭が真っ白になっているからだ。そんな真っ白な頭は会話を重ねていくうちに徐々に彩を取り戻したが、1時間のなかでリラックスる出来る時間は殆どなかった。

 


前回のデートは「自分がたくさん話す」ことが多く、それが原因で相手が退屈して2回目を断られた、という風に考えていて、今回はとにかく「相手の話を親身に聞く、笑顔で、相槌も絶妙で」ということを念頭において臨んだ。それ、あまり出来なかった、とうか、緊張がずっと持続していて、話に集中しようとしても内容がなかなか入ってこない。終始そんな感じだったので、「え?」とリアクションされることが多く、そんな空気にさせてしまったことを恨めしく思う。B子さんは次から次へと話題を提供してくれるので、私はそれに乗っかって相槌をうち、所々で自己開示を行うだけで「なんとなく」会話が成り立っていた。「なんで私ばかり話さなければならないのよ」とB子さんが思っていたかもしれない。でも2カ月ぶりにちゃんとした外出をした、毎日リモートワークなので人と会話する機会が全然ないの、と話すB子さんは輝いて見えた。

 

「私、計算が苦手なんですけれど、どうしたら改善すると思いますか」

 

という問いかけは私が経理だから振ってくれた話題なのに、それに上手いこと返すことが出来なかった。

 

「最近は卵焼きを作ることが多くて。卵焼きを作る専用のフライパンを買ったんですけれど、収納スペースがないのでどこに置いたらいいのか...」

 

とかたくさんの話題を提供してくれたB子さんは何も悪くない。かといって私も悪いかと言われると、一概にそうは言えないんじゃないか。今はそういう風に思っていないと心の調子が急降下してしまいそうで不安である。

 

 

1時間ちょっとで互いに飲みものを飲み干して、私の方から、

 

「そろそろ行きましょう?」

 

と言い、それを承諾してくれたのでお会計。

 

「いえいえ、割り勘でいいですよ」

 

と言ってくれたが、1時間も付き合ってくれたので、もちろん私が奢りますよ。前回はコース料理だったので財布がだいぶ泣いていたが、今回はコーヒー一杯なのでちょっと拗ねるだけで済んだ。

 

 

店を出て、駅まで歩く。そこで他愛のない会話をして、改札まで送ろうとすると、

 

「私、たぶんこっちなんで。今日はありがとうございました。じゃあ」

 

と足早に去っていくB子さんは振り返ることはなかった。2回目のデートはこうして終わりを迎えた。

 

 

すぐにLINEで、

 

「今日はありがとうございます!B子さんと話していてとても楽しかったです。もしよかったらまたお茶しませんか?」

 

と送り、すぐに、

 

「こちらこそとても楽しかったです。またご飯食べに行きましょう!」

 

と返ってきた。これはもしかして脈アリなのか、えっ、あれだけ手応えがなかったのに、逆に緊張してあまり話を盛り上げられなかったけれどそれが逆に良かったのか。と浮かれた私はすぐに、

 

「次のお茶はこの日、もしくはこの日でいかがですか?」

 

とLINEを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、デートから2日過ぎて、もう夜も深まりつつある時間である。既読はついている。けれど返信は来なかった。終わったんだ、あれは単なる社交辞令だったんだ。緊張していたからな、そりゃうまくいかないよな。よくやった、これも経験だよ。とどこかの自分が励ましてくれるけれど、その声は心の中心には届かない。ただ茫然と虚空を眺めている、寂しい時間が流れていくだけだった。