眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

2020年12月23日(水)

「存在証明 なんてもの俺には間に合ってますもの
さぁ 目を凝らせよ」

 

起きたら3時だったので、愉快な気分になった。このまま朝まで踊り明かしてみたら私の人生は劇的に変化するかもしれない。でも臆病な私は、寝不足で人生を失うことを恐れ、急いでロフトに上がって眠りに就いた。幸せ過ぎるほどの眠りで、短編の夢が何本か上映された。朝が来て、うとうとしているこの時間をぎゅっと抱き締めたくなった。相変わらず朝飯はフルーツグラノーラに豆乳をかけたのを食べている。テレビは今日もコロナコロナと騒ぎ立てていたので、そっと音量を消した。いつもよりちょっとだけ遅い時間に家を出たので、ぎりぎりの電車になった。電車の中は劣悪な空気が漂っていて、こんな空気を毎日のように吸うくらいだったら思い切って田舎へ移り住んでしまってもいいような気がしていた。東京での文化的恩恵を受けられないのであれば、高い家賃を払ってまで東京に住む理由はない。田舎に住んで、悠々自適な暮らしがしたい......というのは幻想に過ぎず、本当は煙たい毎日が待っていることだろう。会社に着いて、すぐに始業になった。一通りの屈伸運動を終えたら目の前に居た先輩が、「もうちょっと早く来た方が、先輩受けするぞ」と言ってきたが、朝の貴重な時間をそんなことで無駄にしたくなかった。朝早く来ただけで評価をあげるような人にわざわざ認められたいとは思わない、私は会社で働くような人間ではないようだった。今日は井戸端さんだけが欠番。昨日家では出来なかった仕事と、新しく舞い込んできた仕事を訥々とこなしていくとあれよあれよと時間が過ぎていく、そのスピード感にうっとりした。今日を含めたら今年の出社はあと2日で(明日は在宅勤務)、だからといってさっさと仕事が終われとかそういうことは想起されず、それは今の私の仕事がイージーモードだからであったから。集中して仕事をし終えた後に飲む水はこれ以上ないほど美味しくて、ぐびぐび飲んでいたら尿意の加減がおかしくなってしまったので、ぬるま湯でちびちびやっていたらお昼になった。もう外食することはないのかもしれない、と思うくらいに私は毎日毎日弁当を持ってきてそれを食べている。今日の弁当は唐揚げ、ポテトサラダ、純豆腐チゲという鉄板の具材で占められていて、さすがにちょっと飽きてきた。そろそろ冒険をしてみてもいい頃合いだろう、そろそろ自炊をしてもいい頃合いだった。弁当を食べ終えたら圧倒的睡眠を欲しがっている体に抗うことなく、惰眠を貪っていた。

 


午後の部が始まる。午前中にそこそこ仕事をこなしたのに、まだまだやるべきことがあるというのは私の心を癒してくれるのだ。暇ではない、やるべきことを淡々とこなしていく日々が毎日続けば、精神は平穏に保たれるのだろう。同じ部署で働く人々は忙しそうにしていて、彼らのそのような状況が「年の瀬」を思い出させてくれた。年末なのに私の仕事は一切変化することなく、のんびりと歩く幼児のように陽気な輝きを放っていた。

 


仕事を頼んでいるのに一切返事がなく、それの締め切りが近づいていたので電話をしたら違う人が出た。「今日は在宅なんです」と申し訳なさそうにしており、「もしよろしかったら私が対応しましょうか」ということなので、以前送ったメールを転送した。返事が返ってきて、その人は私が以前経理に居た時にちょこちょこと関わりのあった人で、それを先方も覚えてくれていて、「以前経理にいらっしゃった〇〇さんですよね」とメールに書かれていて、温かい気持ちに包まれた。社内の人と殆ど関わりを持たないでここまでやってきたので、私の存在を認知してくれる人がいるということはちょっとだけ私の存在を支えてくれる支柱になっていた。「これからいろいろとお願い事をするかもしれませんが、宜しくお願いします」と返信し、ほくほくした気持ちになっていたので、このまま午睡してしまって土曜になればいいのに、とさえ思った。私は分かりやすいくらいに浮かれていた。

 


定時になって、特に今日中にしなければいけないことはなかったのでそそくさと退社した。他の人々も同じタイミングで退社したので、出口が混んで、なかなか身動きが取れなくなった。密の状態が3分ほど続き、「もういいわ!」と吠えた人が何人かいて、その人たちが会社に戻ったので密の状態から解放され、人の動きは流暢になった。最近新宿の本屋へ行っていなかったので、ふと行きたい気分になり、早く帰らなければいけないようなこともなかったので、新宿駅へ降り立った。久しぶりに新宿に来た気分だった。最近は家と会社の往復、もしくはずっと家に居ることが多かったので、新宿の西口、あるいは東口を歩くのはなかなかに新鮮だった。まずは西口の贔屓にしている本屋へ。文庫本を長らくチェックしていなかったので、気になる文庫本がたくさん陳列されており、自分へのクリスマスプレゼントに、という甘い気持ちで無造作に文庫本を買ったら11冊、1万円を越えた買い物をしていた。11冊も買うとさすがに重量があり、歩くだけで体力が奪われたが、東口にも行きたかったので重い思いをして東口の贔屓にしている本屋へ行った。こちらは最近出た本のサイン本が豊富に取り揃えられており、夢中になって本棚を眺めていたら4冊もサイン本を購入していた。今年最後の本の爆買いであった。重い思いをして家に帰る。クリスマスのライトアップが私をより孤独にさせた。

 

 

<購入した本>

ブックファースト新宿店

横尾忠則「言葉を離れる」
清水義範「国語入試問題必勝法」
開高健「流亡記/歩く影たち」
奥泉光「雪の階(下)」
小川洋子「密やかな結晶 新装版」
小山田浩子「庭」
町田康「湖畔の愛」
阿津川辰海「紅蓮館の殺人」(サイン本)
ピーター・トライアス他「2010年代海外SF傑作選」
トニ・モリスン「青い眼がほしい」
モリー・グプティル・マニング「戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊」

 

 

紀伊國屋書店新宿本店)

川上弘美「森へ行きましょう」(サイン本)
村山由佳「ミルク・アンド・ハニー」(サイン本)
奥泉光「雪の階(上)」(サイン本)
吉田篤弘「金曜日の本」(サイン本)

 

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19時過ぎに家に帰りつく。はあ、明日は在宅勤務なのでぽかぽかした気分である。簡単に夕飯を済ましたら読書を始めた。最近の私は韓国ドラマでもなく映画でもなく、読書なのであった。町屋良平「ふたりでちょうど200%」を訥々と読み進めていった。今回の町屋良平はうまく体に入ってこず、読み進めるのは非常に難儀である。でもそれこそが町屋良平であるような気がして、読みづらいぶぶんも含めて彼だった。途中で眠たくなって、床の上で横たわって(ちょっとだけ)の睡眠のつもりが気付いたら熟睡していた。こんな生活ばかりしていたら、早々に体調を崩しそうで怖い。