眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

自転車の鍵

一週間後に控えた引越し。1年前に無くし、そのままにしていた自転車の鍵を探す。見つからない。部屋はごちゃごちゃしており、それらから目的のものを探すのはなかなか難儀である。テレビの裏や、本棚の裏を探す。無くしたことすら忘れていた代物がずらりずらりと出てくる。でも今私が探しているのは自転車の鍵である。

 

 

場所をクローゼットに変更し、黙々と鍵を探す。ない。もうちょっとどうにかしてしまいそうなくらいに思いつめた心。ここにはないのだ。

 

 

場所を和室に移す。ここが我が家の中で一番の迷宮で、一度入ったら季節が変わらないと出られないというのが専らの噂である。私の部屋など比較にならぬほどのごちゃごちゃをえんえんと漁る。ない。ない。そこで母親の声が聴こえてきた。

 

自転車の保証書の中に、予備の鍵が入っているんじゃないの

 

その手があったか。夢中になって保証書が入っていそうなバッグを片っ端から漁る。ない。ない。そこでふと、水色のバッグが目に入った。「あ、多分この中に入っている」少し探してみたらそれらしきものが出て来て、袋を上下に揺すると銀色の物体が。「あった」

 

 

それを手にした私は家の扉を思い切り開け、自転車へ向かう。もしかしたら...、の鍵を自転車の鍵穴に差し、思いっきり捻じる。

 

かちん

 

待ち望んでいた音が、21時、私の目の前で鳴り響いた。