眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

負けてもいい

咳が酷い。そろそろ終焉を迎えるであろうと思っていた風邪がここに来てぶり返しを見せている。金曜日の夜、ライブ終わりの家、咳が咳を呼び、ずっと悶えていた。喉飴といった喉を癒す類のものは切らしていて、かといってドラッグストアも閉まっている。はちみつを混ぜた飲み物をひたすら嚥下して、咳が治まってくれることを願っていた。

 

 

土曜日の朝、8時にふいに目が覚める。咳き込みからのスタート。止まらない。このままだと比喩でも何でもなく死んでしまう。急ごしらえの簡易加湿器をテーブルに置いて、スマホで駄文を読み下す。足の方の意識が疎かになっていた。足が簡易加湿器に当たり、「ぴーぴー」という音。慌てて簡易加湿器が落ちていった方を見ると、びしゃびしゃになった箱。箱を開けると、中にしまっていた大切なものがびっしょりと濡れていた。普段はめったに触ることのないそれらに付着した滴を丁寧に拭き取っていく。大学生のとき、部活の本番が終わった後に貰った手紙が濡れていた。捨てようか。見返しても無駄に感傷的な気分になってしまう。ネパールの通貨。Zeppで貰ったドリンクホルダー。お守り、キーホルダー。ゲームボーイアドバンスお薬手帳、文房具。給与明細。パスポート。触れようとしてこなかったものがたくさんあって、残念な姿になったそれらを見て、「もういいかな」と思えた。

 

 

無駄なものも全部残しておこうと思っていた。しかし人生は短い。大切にしまっておいたそれらが日の目を浴びる機会はないかもしれない。もういっそ捨ててしまおう。「いつか必要になるかも」は「別に今必要ではない」し、そんなものばかりで溢れかえっている部屋は歪だ。最低限のものだけで生きていけばいい。

 

 

最低限で、生きる。今日も風が酷い。