眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

207日目「さらば東京」

東京での最後の営業の日。私はほんの少しだけ与えられた仕事をぽつりぽつりとやっていた。あとはただ、どのタイミングで異動の挨拶をするかを見計らっていた。あまり早過ぎても、と挨拶しかねていたら皆外に出てしまって、職場には殆ど人が残っていなかった。昨日、経理の人に挨拶に行ったのが休まれていた人がいて、その人に一応筋を通しておいた方がいいだろう、と思い挨拶に行った。

 

 

「あなたにはあなたの色があるんだもの。きっと自分の良さを出せる職場が見つかるわ」「なんでもっと早く言ってくれなかったの。折角だから送別会をしてあげたかったのに」経理時代に私が大変お世話になった大先輩は相変わらずの最高っぷりで私を励ましてくれた。一緒に仕事をしていたのは一年前のことだからもう私のことなど忘れているのではないか、とおそるおそる異動の挨拶をしに行ったら望外の優しさで背中を押して頂けた。そうだ、この大先輩はこのような心持の人だったのだ。異動のプレッシャーで知らず知らずのうちに強張っていた身体がするすると解けていくのを感じた。私がこの一年間所属していたチームが最悪だったというわけではない。だけれど、私という個性を生かすには少々荒れた環境だったことは否定しない。新人を育てる、という意識がチームの先輩方にはなく、ただ「雑務を押し付けてやる。それがあいつの成長の糧になる(かもしれない。きっとなる。つうか教えるのだるいな)」という荒っぽい考えで、それを私は酷く忌み嫌っていた。懇切丁寧に教えてくれる先輩、なんてレベルを求めていたわけではないけれど、しんどいことがあったときに腹を割って話したいと思えるような人がチームの中に一人だけでもいてくれたら、と願ったことは数知れない。結局のところ、この一年間はトライアル期間と評しても差し支えないほどに実りのない一年間で、後悔してもしきれない時間の過ごし方をしてしまった。この後悔は4月から始まる新たな一年間で晴らしてやるつもりだ。環境がどうのこうのじゃない。やっていくしかない。ただ、「(営業でのこの一年間)大変じゃなかった?」という大先輩の優しきお言葉、強がりで「大丈夫でした」と言えない自分がいた。うっかり忘れてしまいそうになるけれど、私は一ヶ月間休職をしていたんだ。名古屋では、「あいつは休職をしていた」という色眼鏡で見られるだろうから、そんな下らない眼鏡をぶち壊す勢いでやっていくしかないのだ。そんなこと、多分今のへなへなになったメンタルの私には出来そうにはないけれど。

 

 

定時に会社を後にして、一年間営業を頑張ったご褒美に少し足を伸ばしてお気に入りのハンバーグ屋に行った。開店したばかりなのにお客さんで溢れかえっていた。目の前に置かれた名物のハンバーグはそれはもうたまらなく美味しくて、もっと量があったらいいのに、とそれだけが気がかりだった。家に帰ってビールを飲みながら「水曜日のダウンタウン」と「Mother」を観てたら眠くなってしまって、布団に横たわったら眠っていた。明日はクロマニヨンズのライブ。いい一日になるといいな。

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