眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

2020年8月18日(火)

「片思いをしてるようないないような
曖昧なバランスで浮かんでる 良いじゃん そんな感じ」

 

昨日も眠れなかった。25時まで起きて、そこからすっと寝てしまおうと思っていた。気付いたら気になったことをネットで調べていて、それでちょっと神経が昂ってしまったようで、眠気は一切無くなった。横たわっていても時間の無駄なので、下でサラ・クロッサン「わたしの全てのわたしたち」を読み始めた。もともとは詩であったものを小説に直したそうで、とても読みやすく、でも所々で胸に刺さるものがあり、夢中になって読んでいたら150ページほど読んでいて、26時を過ぎていた。もう大丈夫だろうとロフトに上がって目を瞑るも、先程の小説のせいでまた神経が昂ってしまったようだ。なので、もう一回寝るのを諦めて、米津玄師の「STRAY SHEEP」を聴いて、心を集中させていたらちょっとだけ眠気が訪れたので、それを逃さないように慎重に捕まえて、それからはすっと眠りに就いた。

 


だから朝は眠たかった。7時20分まで寝て、まだ寝たかった。今日もニュースで新型コロナ関連のニュースばかりやっていて、テレビばかり見ていると馬鹿になる、というのは本当のことだったんだな、と今更ながら気づいた。寝不足の体に直射日光が突き刺さる刺さる。刺さったまま電車に乗って、人の間に飲まれそうになりながら、暫しの間目を瞑って休息を取った。もう、このまま目を瞑ったままでいたい、と甘美な誘惑をなんとか振り払って、会社へ着いた。結構ぎりぎりの電車に乗ってしまったので始業までに間に合うだろうかと不安だったが、この時間でもまだまだ間に合った。始業になって、それから私はするべきことを失った。昨日だって不意打ちのことでなんとか時間を稼げたようなものなのに、それは昨日のうちに解決してしまったので、今日はするべきことがない。何度も言うけれど、忙しさを均してほしい。誰に向かって?暇な時もちょっと忙しい時も同じだけの給料が貰えるなんておかしいじゃないか、と声高に言ってみるのは気持ちいいかもしれないけれど、その暇な時間を十分に謳歌している強者だっているので、そういった発言はしないように控える。会社では常に清貧を心がけ、「私が私が」という気持ちを一切表に出さないで、まるでロボットであるかのように立ち振る舞う。そう、私の先輩であるコピーロボットのように。そうすることで次第に人間の気持ちというものが剥がれていき、気付いたら会社の歯車としてぐるぐるぐるぐる回り続けていることだろう。それが幸せならばそれでいいんじゃない?私はそんな風になってまで働きたいとは思えないけれど。

 


と、そんなくだらないことを考える余裕があるほどに午前は暇だった。ということはまあ、午後も暇であるということである。昼休みはちょっと飛んでいたので、あまり記憶が残っていない。ぎりぎりで損をしなかった判断と、無駄に費やした体力だけが頭に残っている。

 


午後は午前にも増して暇で、もう私はこの会社に必要のない存在なのか、と悲しくなった。悲しくなったふりをして、でも暇すぎると死ぬので過去の資料を見たり、共有の仕事を眺めたりしていた。意識すると職場は静かで、無意識だと職場は喧しくなった。暇を経験した数だけ後輩に優しくなれるような先輩になりたい。......こんなにもどうしようもない時間ばかり繰り返していたら、後輩に何かを教えてあげられるほど賢い人間にはなれない。だったらこの暇な時間を経理の勉強に充てればいいんじゃないかと思ったんだ。私が暇を持て余していても誰も得をしないのなら、暇な時間は勉強すること、自ら進んで学びに行くことが大切なんじゃないかと思って、でもそれは到底受け入れられるような意見ではないことに気付き、大人しく暇を持て余していた4時間。4時間は私が思っている以上に長くて、残酷な怠惰であった。だから、仕事が終わった、というよりも仕事が萎えた時に瞬時に職場を飛び出して家に帰れるような瞬発力を大切にしていきたい。そう願う夕方の晴れ。

 

 

家に帰って、肉野菜炒めを作って、食べて、テレビをそこまで観ることなく、親と話して時間が流れていく。上手く話すことが出来ない。仕事の時に殆ど声帯を使わない、そのあとのプライベートの時間も声帯を使わない、そりゃ衰えるわけだ。家になんでも気軽に話せる相棒がいてくれたら心強いんだけれど、私はここ半年、ずっと一人ぼっちだ。一人ぼっちの風に吹かれながら、「一人でいることにも勇気が要るんだぜ」と自分を奮い立たせている。さりとて、相棒が出来たら出来たで一人の時間が欲しくなるはずだ。もう二度と、同棲というお試し期間、という過ちを犯すまい。

 

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これだけ疲れが溜まっているのだから、今日こそはすっと寝れると期待して本を読んでいた。久しぶりに阿久津隆「読書の日記」を読んだ。そうしたら読み終えた。1,100ページもの大作を読んだのは多分初めてなので、読み終わったあとは軽く身震いした。そして読みたいと思っていた、本の中に挟まっている小冊子を読んだ。保坂和志の「すべての文章に当てはまるわけではないが、この人の文章はまさに、文は人なり」という意見に激しく頷いた。もう本当にこの本は読んだ人を読書に駆り立てる本で、どれだけの本(特に洋書)をリストに挙げたことだろう。そしてこれは読書の記録であるとともに、喫茶店で働く男の、労働の記録でもある。「今日も度し難く暇だった」とぼやく店主がいる喫茶店はどのようなものなのだろうかと気になった。初台、今度の休みにでも行ってみようかしら。そしてこの読書日記の続編にあたる本を既に購入しているので、それをすぐに読み始めてしまってもいいのだけれど、今回の読書体験があまりにも素晴らしかったので、ちょっと取っておきたい、まだ読むのは勿体ないと感じた。だから他の本を読んでいたのだが、ちょっと眠くなった。あと少しで25時を回ろうとしていた。なので電気を消して目を瞑った。ぼんやりとして眠気に導かれて、私は久しぶりに深い睡眠へと落ちていった......。

 

一日激烈に暇で、今日はもう終わりだな、誰ももうおらんし、と思っていた二二時半から珍しいことになった。久しぶりに来られた方がまずパソコンを机に置いたので、あ、パソコンだいぶ使えなくなったんですよ、詳しくは読んでいただくとして、で今夜はどうなのか、というところなんですけど、これから新たにお客さんが来ることはわりと考えにくく、で、この状況であれば別段好きに使っていただいてもいい、が、万が一でお客さんが来られたらルールに則っていただく、という感じになるんですけど、ということころで、諾、というところで、それでオーダーされたものをお出ししてわりとすぐだった、万が一だったお客さんが来られて、ありゃーなんか諾とはいえ申し訳なさ感じる局面~と思っていたところ、その方もパソコンを机に出された、それで、あ、パソコン、だいぶ使えないんですけど、で、それは読んでいただくとして、で、今あちらの方パソコンで、で、今日ご両人ともにパソコンなんで、なのでなんか今日はもうOKみたいな、と言って、で先ほどの方のところに行き、あの、さっきお伝えしたことなんですけど、あ、でも、あちらの方もパソコンで、なので今日はもうOK、という感じで、とお伝えした、で、二人に向かって、ただ、ただ、万が一ほかのお客さん、本読むぞ、という、が、来られたときはルールに従っていただく感じになりますんで、という、はーい、という、極めて珍しいことが起きた。今、だからフヅクエには、現在では通常まったくありえない、マウスのクリック音がぱちぱちと鳴らされる、そういう状態になっている。久しぶりにクリック音を聞きながらやっぱりこの音は凶暴だよなと思いながら、それはそれとしてこの夜の展開を面白く思っている。

阿久津隆「読書の日記」p1097-1098

 

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