眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

402日目「ぐっちゃぐちゃの頭の中を」

 

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くだらないことを書いてしまった。くだらないことを書かなければいけないほど、私はどうにかなってしまっていたのだ。

 

 

一度陥ってしまった穴からなかなか抜け出せずにいる。そこから抜け出す方法は知っているし、手段も道具も揃っている。けれど、一歩を踏み出す勇気がない。情けないよな、とうなだれる。うなだれていて時間が過ぎるのなら世話はないわけで。仕事をしている、給料を貰っているという身分なので、そのような戯言みたいな真似は許されない。許されてなるものか、と内なる自分がえんえんと説教してくる。「でもさ」と反論してみようとする私の口をぐっと塞ぎ、「仕事しろ」と正論をお腹にぶち込んでくる。そりゃ、まあ、私だって出来ることなら仕事がしたいです。バリバリに(死語か)仕事をして、会社の利益に貢献したいし、お客様の喜ぶ姿も見たいわけですよ。しかし、そんな夢のような光景を見ることが出来ないのは、私が仕事をサボっているわけでは決してなく、ただただ適切に仕事が振られていないわけである。名古屋に配属されてそろそろ一年。もう独り立ちしてもいいだろ、と思えるくらい今の職場で時間を過ごしてきたわけだけれど、残念ながら独り立ちといった芸当は現状の私には不可能なのでした。ただ放置されている、いやこれは放置ではない、先輩は私が一人で黙々と仕事をしていると思っている。のか?いやいやいやいや、そんなことはない。勘が異様なまでに鋭い先輩なら、私が暇を持て余していることに気付いているはず。それでも一切声を掛けず(「今暇?」などと言った直線的な言葉さえ)、黙々と仕事をしているのを目の前で見ていると、私が悪いんじゃないか、仕事を見つけてこれない私こそが悪なのではないか、と思って、悩んで、悩み尽くして、苦しくなる。ぐでーっとしたくなる。家に帰っても仕事の事が頭から離れなくて、自分は会社から必要とされていないのに、毎日のうのうと出社しているのが馬鹿らしく思えてくる。僕、仕事したいんです。出来ないわけじゃないんです。でも、適切に指導されていないし、適切に仕事を振られていないんです。厳しい社会ではそんなことは一蹴され、「そんなもん、お前が本気出していない証拠じゃろうが!」と一喝されるのがオチである。しんと静まり返った社内、ぽつんとデスクに座って、やることはない、でも何かしらやっているフリをしなければいけないのは屈辱以外の何物でもない。仕事はそこそこあったほうがいい。先輩みたいに異様に忙しいと精神と肉体が蝕まれてしまう。反対に、暇すぎても精神と肉体が腐ってしまう。適切な量の仕事が配分されれば、それされしてくれればいいのに。はい、欲張りました。欲張っちゃいましたね。なんでこんなにも、自分の恥をつらつらと書き連ねているのでしょうか。「はい、相談できるような相手がいないからではないでしょうか」正解です。職場には仕事の愚痴を零せるような、気を許しても怒られないような、そんな存在がいない。世間話が出来るような人もいなくて、ただ能面をつけて黙々と仕事をしているようなフリを続けている。狂いそう。親にはたまにぽろっと吐き出すけれど、でもそれだけじゃ足りない。足りないんだよな。

 

 

夢中で文章書き続けていたら少し落ち着いた。深呼吸してみる。別にそれで現実は一切変わらないけれど。

 

 

もうこの夜、真っ暗闇でしんと静まり返った夜の中に溶け込みたい。ぶちゃっと、人間としての原型をとどめないくらいに溶けて、行く先の分からない夜の暗闇に溶け込んで消えたいよと思った2020年2月6日22時12分。人生はそう簡単には変わりはしませんね。

 

 

 

 

高山羽根子「如何様」が胸を抉ってくる。ぐりぐりぐりと、今まで痛みを感じていなかったふりをしていたところを、ぐりぐりぐりと抉ってくる。この人の作品は現代の小説家の中でも特別に好きで、作品が出る度にどきどきしながら読んでいる。今まで発表してきた作品すべてこの上なく好きで、好きで仕方がない。感想を書こうとすると好きが高揚してしまって、文章を上手く書けなくなるくらい、論理が破綻してしまうくらい好きなのである。どうしたらこんな美しい文章を書くことが出来るのだろう。本の読書会、みたいなイベントで一度お会いしたことがあって(なんたる幸運!)、そのときにちゃんとお話すればよかった。悔やまれる。いやそんなことはさておいて、新作の「如何様」である。冒頭からぐっと引き込まれた。

 

世田谷でもこのあたりはひときわ坂が多い場所だった。一歩ずつ進み、一区画ずつ番地を確認しながら坂をのぼる。この坂には名前がないようだ。いや、田舎にいた幼いころは坂の名前などないのが当然だったか。そもそもこの世の多くの場所にとって、坂道は高さのちがうところに行くための道というだけのものなのに、東京というところはどういうわけか、こういった坂ひとつにもいちいち御大層な名前がついてることが多かった。

高山羽根子「如何様」p7より引用

 

何気ない文章なんだけれど、これからどのようなお話が展開されていくのだろうか、とワクワクしてくる。内容は安定の高山羽根子印で、もうウキウキして仕方がなかった。読み終えてしまうのが勿体ないくらい、すごく良く出来た作品である。読んだ記憶を一回消去して、また一から読み直したい。仕事でくたびれた私を落ち着かせてくれた、とてもとても大切な作品です。

 

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