眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

社内ニート

社内ニートになってからどれくらいの年月が流れただろう。転勤したての頃は張り切っていたのに。最初の頃は先輩から任される仕事をえっちらおっちらこなし、なんとか日々を送っていた。いつからだっただろう、突然先輩から仕事を振られなくなった。「仕事くらい自分で作れ」ということなのだろうか。まだ一人前になれていない私はどのように仕事を作り出したらいいんか分からず、途方に暮れる日々が続いた。ある日、いつまでも社内に居るのが窮屈になって、「新規客先を獲得してやる」と鼻息荒くして、目星をつけたお客様のところへ出向いた。門前払いだった。「間に合っています」と言われ、どのように返したらいいのか分からなかった。先輩に相談しても、要領を得ない回答しか返ってこなかった。眠れない日々が続いた。「どうしたら仕事が出来るようになるのだろうか」「どうして先輩は私のことを放置するのだろうか」「私は先輩から見放されてしまったのだろうか」不安は日に日に雪だるまのように膨れ上がっていき、ついには食欲もなくなっていった。大好きだったお肉ですら口にしたいと思わなくなり、気付いたら虚空を眺めていることが多くなった。たまに「なんで自分は生きているのだろうか」という呪いのような考えに頭を支配されて、うまく呼吸することが出来なくなった。出社しても誰も目を合わせてくれないし、挨拶をしても無視される。私はここで働くべき人間ではなかったんだ、という諦観を持つようになってから私の心はすっと軽くなった。すると夜もぐっすりと眠れるようになったし、大好きだったお肉ももぐもぐ食べれるようになった。私はいつしか職場の人々を軽蔑し、軽蔑するような人と一緒に働いている時間がこの上なく無駄なものに思えた。もうここに居てもしょうがない、と思った日から1カ月後、私は上司に辞職願を提出した。上司は渡された辞職願を一瞥し、「まだこの会社に居たのか」と息を吐いた。私はすぐに荷造りをして、その日のうちに退職の手続きは完了した。特に退職の挨拶をすることもなく、会社を出た私を出迎えたのは黄金色の夕焼けだった。最近は下を向いて歩くことが多かったから、久しぶりにこんなにも綺麗な夕焼けを見た。その夕焼けが続いている方向に私はゆっくりと足を運んだ。今から、私は自由なんだ。そう思ったら体中の緊張がすっかり解け、みるみる力が漲っていた。別にすぐに自分の居場所が見つからなくてもいい。ゆっくりやっていけばいい。