眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

342日目「わたしはきょうもいきた」

今日も朝、絶望が私を打ちのめす。会社に行きたくない、というシンプルな理由が私の心を家に留めようとする。いっそこのまま知らぬ存ぜずで昼まで寝てしまおうか。いいよな、いや、だめだよな。真面目過ぎる私は、ぼろぼろの布雑巾に成り果ててしまった心を大事に抱えて、青空の下、出社した。

 

 

昨日報告できなかったこと、上司に報告して、私が出来ていなかったことを指摘された。そこに感情は伴っておらず、それはそれでどうなんだろうと思うけれど、ガミガミ怒られるよりかはまだマシか。でも私に対して興味がなさ過ぎて、仕事を頑張って上司に認められたい、なんてくだらない欲が発生しないのはいいと思う。まあそんなこんなで朝から勝手に頭がカーッと緊張して、でも自分の中で溜め込んでいるものをいつまで経っても持っていたくなかったので、先輩にまとめて言った。それに対して「おせえよ」と叱られることもなく、「そうかそうか」という反応で、喜んでいいのかどうかよく分からなかった。頭の中での私は「お前は仕事をするのが遅い」というデモンストレーションをしていたので、先輩のその反応にあっけなさを感じるとともに、「もう少し突っ込んだことを聞いてくれればいいのに。私は雑務をするマシーンではないんで」と少し寂しくなった。こんな人間にも明日、新しき者が入ってくるんですよ?考えられますか?上司は一体どこを見ていらっしゃるのでしょうか。

 

 

新規、あれほど怖い怖いと思っていた。今日、少しだけれど事態が動いた。少し心が楽になった。これで週初めの、上司にちょいちょい突かれるのは避けられるはずだ。今から練習しなくちゃ。

 

 

昼過ぎて、上司も先輩も飛び立って、私はまた一人、ぽつねんとデスクにいた。必死になって仕事をするフリをしていた。絶賛、時間の無駄遣いである。こんなにも贅沢なことをしていて、あとで罰が当たらないかどうか不安である。定時にはささっと帰る予定だったけれど、あーだこーだで1時間以上も残業してしまったのはなんとも虚しいものである。とぼとぼと家路を急ぐ。

 

 

家に帰って少しのんびりしてから、「リズと青い鳥」を観る。

 

「みぞれさ、今まで手加減してたんだね」
「えッ?」
「私のレベルに合わせてたから今まで全力が出せなかったんだ」
「違...」
「私 バカだね~。みぞれに頑張って~とか言って。みぞれが本気出せないの私の実力が足りてないだけだったわ」
「違う」
「新山先生に音大薦められたのみぞれだけだもんね。わかってたけど、みぞれ昔っからうまいもん。ズルいよ みぞれは。ホント ズルい」
「希美...」
「私さあ、みぞれに負けたくなくて。なんか 同等になれるかなって思って同じ音大に行くって言った。私才能ないからさ。みぞれみたいにすごくないから。音大行くって言ってればそれなりに見えるかなって思って」
「希美...」
「私...みぞれみたいにすごくないから。私 普通の人だから」
「違う」
「みぞれはさ、これからきっと広い世界に出ていくんだよね。「リズと青い鳥」は何とかみぞれの演奏に見あうように頑張るよ」
「希美...」
「みぞれのソロを支えられるように」
「聞いて! 希美はいつも勝手。1年生の時だって勝手に辞めた。私に黙って」
「昔のことでしょ」
「昔じゃない。私にとってはずっと今。私はずっと希美を追いかけてきた。希美に見放されたくなくて楽器も続けてきた。私の一番はずっと希美。希美と一緒にいたいからオーボエも頑張った。希美といられれば何だっていい」
「そんな大げさなこと言わないで...」
「大げさじゃない。全部ホント」
「ズルいよ...」
「希美が 私の全部なの」
「私 みぞれが思ってるような人間じゃないよ。むしろ軽蔑されるべき」
「希美は私の特別。希美にとって何でもなくても私には全部、全部特別...!」
「ん~ 何でそんなに言ってくれるのか分かんない...。どうしたの?」
「大好きのハグ」

 

「私 希美がいなかったら、何にもなかった。楽器だってやってない。希美が声かけてくれて友達になってくれて 優しくしてくれて うれしかった」
「ごめん それよく覚えてないんだよ...」
「みんなを引っ張っていつも楽しそうで すごいなって思ってる」
「みぞれは努力家だよ」
「希美の笑い声が好き。希美の話し方が好き。希美の足音が好き。希美の髪が好き。希美の...希美の全部」
「みぞれのオーボエが好き」

 

 

ここが一番好き。いや好きな場面はいっぱいあって、それこそ初めのシーンからずっと好きなんだけれど、終盤のここが一番好き。今まで言えなかった気持ちをぶつけるシーンってどうしてこうも脆くて儚くて、そして美しいのだろうか。現実の世界に疲れてしまった私にとって、京都アニメーションの美しい絵はただそれを眺めているだけで癒し。そこにどぎつくない演出で紡がれる、二人の少女の物語。希美がみぞれのことを守っているかばっている(図書館の返却シーンとか)ところ尊い。こんな友達関係を眺めているだけで心が浄化されていく。でもそんな綺麗な友達関係の裏側に嫉妬などなどドス黒い感情を渦巻いているわけで。それを圧倒的な絵と脚本、演出で持って完璧に描き切ったラストがもう。90分の映画なのだけど、飽きることなく、ほぼ食い入るように画面にかぶり付いていました。「響け!ユーフォニアム」がすっごく好きだったので、そのスピンオフ的作品の存在はもちろん知っていたけれど。映画館で観る機会を手に入れることが出来ずに今日まで過ごしてしまった。TSUTAYAのレンタルコーナーにこの映画が陳列されているのを観て「今観たい」という強い衝動に突き動かされてこの映画を借りて、今日観ることになったんですけれど。結果、仕事でやつれきった私のジメジメとした心を優しく包んでくれました。もう一度観たい。もう一度観ようよ。

 

 

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リズと青い鳥(☆☆☆☆)

 

 

明日行けば今年最後の三連休(だったはず)。そう思っても、まだ心はどんより曇っている。明日も会社行くのか、行っても何もすることがないんだよな。ならもう出社する必要なくない?仕事してない人間に会社もお金を払うなんて馬鹿らしいと思わない?