眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

妖怪せきはずし

妖怪せきはずしは始業30秒前に会社に来て、ラジオ体操の時は眠そうな動きをしている。朝の会議が終わるとそそくさとオフィスから出ていく。30分くらい経つと外から戻ってきて、ニュースサイトの巡回を始める。煙草の気配を纏っている。「あのー、この間の〇〇なんですけど」と部下が話しかけようとすると、「君の裁量で」ぴしゃりと話を止める。本当に眠そうなんだよな、さっきから欠伸しすぎだろ、こっちまで眠たくなってしまうよ。それからも30分おきに席を外している。気づいたら昼になっていて、今日も一人で昼ご飯を食べているんだろう、今日は海のほうまで行ったんじゃないか、海鮮ものが好きだからな。会社の休み時間は13時から14時で、妖怪が戻ってきたのは15時過ぎ。いつも通り過ぎて、こみあげてくる笑いを抑え込むのに必死だった。短時間に煙草を吸いすぎたせいだろうか、シャツは黄ばみ、緩んだ口元からはもくもくと白い煙が立ち昇っている。目は在らぬ方向を向いている。女子社員がしびれを切らして、「ちょっと、煙草!」と迷惑そうに溢しても素知らぬ顔でネットの巡回を始める。ふと始まる貧乏揺すりがが16時半をお知らせします。あと1時間で定時になるから落ち着きがなくなってきたのだろう。先ほどから席外しのペースがおかしなことになっている。3分間席に座っていると「んうぉ」と呻きをあげ、小走りで外へ。5分後に戻ってきて、また3分後に同じ動作を繰り返している。出たり入ったりを繰り返し、ようやく定時になるといつも通りの小躍りを決め、「おっさきー」と今日初めての自発的な発言を残して退社。噂では新入社員の頃から今の姿勢を貫いていたということで、老獪の社員からは一目置かれている、稀有な存在。齢は曖昧。