眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

小説なんてもの

小説を書きたいとずっと思っていた。自分の中にある、 だれかにこっそり教えたくなるような世界を文字に起こして、 世界中の人に読んでもらいたかった。その思いは、 たくさんの小説を飲み込んでいくうちに日増しに強くなっていった 。でも書けなかった。 書きたいと思うだけじゃ小説は書けなかった。気持ちだけでは、 この世界を描写することはできなかった。書けた、と興奮して、 あとで読み返してみたそれはひどいものだった。 文章の書き方というものを私は知らなかった。 ただ文章を飲み込むだけで、 それがどのような法則性に基づいているのかを考えたことがなかっ た。文章の勉強に明け暮れる日々を過ごした。 勉強を始めて3年が経と、いっぱしの文章が書けるようになった。 しかし、 描きたいと感じていた世界がぼやけていることに私は気づいていた 。こんな曖昧な世界を描きたいわけじゃない。私は純粋で無垢な、 エゴというものが一切ない世界を描きたかった。 それを想像することすらままならなくなっていることに失望はしな かった。文章力というものを身につけた私は、 フリーライターとして人一人分の生計をなんとか立てていた。 これでよかったんだ、好きでもない仕事をするくらいだったら、 書きたくもない文章を書いているほうがまだましだ。 そう自分に言い聞かせていた。 そんな煮え切らない日々を過ごしてばかりいると、 昔は簡単に描けていた綺麗な世界は私の中から完全に消失した。 ただ、日々を生きる術だけが残っていた。これでいい。 これでいいんだ。そう何度も自分に言い聞かせた。 物分かりがいいふりをした。 クライアントの要求には素直に応えた。私はもう、 私のために文章を書くことがなくなっていた。そんなある日、 私は完璧な文章を書く男の子に出会った......。