眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

ただただそれは

最近の私が物語に求めているものは、安易な快楽ではなくて。スカッとするような衝撃でもなく、はっとするような驚きでもなく。ただ、地面の底をひたすらに這いずり回るような、どん底の人間を描いているような暗いもののようなもので。今日、本屋に行って真っ先に目に入った京極夏彦の「ヒトでなし 金剛界の章」がすごく強烈に印象に残り、迷わず購入した。疲れ切った体で家でごろごろして、ふと起き上がって先ほどからこの本を読んでいるのだけれで、序盤からひたすらに暗くて滅入りそうになる。娘を失い、妻から離婚を通告され、会社から解雇された男が、雨のなかをただ欝々とした感情を抱えながら歩いていく、その描写がいちいち微細で、読んでいて鳥肌が立ちそうになり。最近は上っ面だけをなぞるようなお話ばかり読んでいたせいか、「本気」の文章と対峙することに慣れてなくて、息が詰まりそうになって途中で読むのを諦めた。これだ、私が物語に求めているのは、人間がどうしようもなく抱えてしまう闇だ。こんなにも懇切丁寧に描写されているの飲み込んでしまうと、他の物語を読んだときにその存在の薄っぺらさに吐き気を催してしまうんじゃないかと今から心配になってくる。京極夏彦は何作か読んだことがあるけれど、どれも後の私に影響を及ぼすほどに危険な作品が多い印象があった。ただ、その本の分厚さに読むのに躊躇することがたびたびあった。この間も「虚実妖怪百物語」を買ったが、その本の分厚さに怯んでしまって、部屋の隅にそっと飾ってある。ただ、「ヒトでなし 金剛界の章」はどうしても今すぐ読みたくなって、ずっと読みたくなって、読んでみたらぐいぐい読めてしまったけれど、物語の圧力がたいへん強かったので途中で読書を断念してしまった。けれど、早く読みたい。読んで、どん底の暗い気分を味わいたい。楽しいだけが人生じゃないし、今の私は他人がどのようにして人生という暗闇と対峙しているのかがすごく気になっている。今日もすごく眠いけれど、それをなんとか誤魔化しながらこの本と闘っていく。

 

ヒトでなし: 金剛界の章 (新潮文庫)

ヒトでなし: 金剛界の章 (新潮文庫)