眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

161日目「AIと仕事がしたい」

一日中、何をしていればいいのか分からなかった。先輩から仕事を振られはしたのだが、「やっといてね」という一言だけが添えられた雑な頼み方で、その仕事を進めるにあたって注意しなければいけないこと、こういったことを初めにしておけばスムーズに仕事を進められるといったことが分からなかった。昔の書類やデータを漁ってみて、「おそらくこういう風に進めていけばいいのだろう」と考えたやり方が実はとても非効率的だった、ということに気付くことが今まで何度もあった。今回もおそらくその類のエンディングを迎えそうで、仕事にとりかかる前から滅入っていた。マニュアルというものが存在せず、限られた情報だけで仕事を進めていくのは非常に疲れる。その仕事の意図(それをすることによって、他の仕事にどのような影響を与えるのか)をあまり理解していないので、ショートカットをすることも憚られるし、一番厄介なのは仕事を振ってきた先輩に仕事のやり方を訊くのが非常に億劫なことである。自分が出来ることは他人も出来て当たり前と考える20年選手の人で、私が仕事の疑問を少しでも漏らそうものなら「それは自分で考えれば分かることじゃん」と一蹴される。正解が分からないまま仕事を進めていくという不安な状況に追い込まれることが何度もあった。そのせいで、些細な疑問でも潰しておきたいのに、そんなことを訊こうものなら馬鹿にされるんじゃないだろうか、と思うと気軽に相談をすることが億劫になる。お金を貰っているのだから、無理をしてでもその先輩からいろいろ聴取して、仕事の疑問点を解決しなければいけないのに、その人の前に行こうとすると身体が言うこと聞かなくなってしまう。どうにかならないものか。他人が変わることを待っていたら日が暮れてしまうので、傷付くことを覚悟してその人にがんがん聞いていかなければいけないとは分かっている。でも、しんどいよ。

 

 

新しきものがてんぱっていて、それはいつものことなのだけれど、仕事を振った先輩はそれを見て非常に苛立っていた。言葉の節々で彼の苛立ちが伝わってきたし、すでにどろどろと外に流れ出していた。新しきものはぽわぽわとしたところがあって、それを自分で自覚しているのかどうかわからないが、先輩に任された仕事をきちんと理解しないまま仕事を進めてしまった。作業の意図を理解していたらかわすことが出来たであろう壁にがっつりとぶつかってしまい、先輩がオーバーリアクションで苛立ちを表明していた。時刻は19時を過ぎていた。他の課の人たちはとっくの昔に帰っていた。私が所属している課は毎日残業祭りを繰り広げていて、誰もその現状を改善しようとする者はいない。だらだらと仕事をしているように見える。仕事なんて一秒たりとも長くしていなくない人間である私にとって、残業しているのにだらだらする姿勢が信じられない。生活のために残業をしているのか。家に帰りたくないがために残業をしているのか。定時内に終わらせられないほどの物量の仕事を抱えているから残業をしていると信じたいけれど。新しきものが先輩に任された仕事を四苦八苦しながら格闘している横で、私は何もすることがなかったけれど、何事もないふりをして「お疲れさまでした」と言って帰れるほど強靭な精神を持ち合わせていない。なので、今までしてきた仕事の成果物を丹念に振り返ってみることでなんとか時間を潰した。......なんで時間を潰してまで会社に残っていないとダメなんだよ。仕事がないならさっさと帰りたいよ。でも周りが残っていると帰りづらいというのも事実。ここは先輩が気を利かして「やることがないなら帰っちゃいなよ」と声をかけてもらいたいところだが、そのようなイベントが発生したことはせいぜい2回ぐらいなので、そんなことを期待している暇があったら思い切って帰ってしまえばいいのだ。ああ、明日は早く帰ってしまおう。明日、何をすればいいんだろうな。もう、会社に行くのめんどくさいな。と毎日考えるのがめんどくさいよ。