眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

虚構

いつか小説家になれると思っていた。小説家になるために努力をしたことが無いくせに、彼は大人になったら自動的に小説家になって、芥川賞なんかとって一躍ブレイクして、出す本出す本が売れに売れて、常に業界の第一線を駆け抜けているだろうことを信じて疑わなかった。彼がこのような思い込みをしてしまったのは、彼の母親の口癖のせいだった。彼女は「小説家なんてあることないことつらつらと書くだけでたくさんのお金がもらえるなんて楽な商売よ。それに比べて肉体労働はこんなにも自分をすり減らしているのに全然お金がもらえない。あんたもちゃちゃっと小説を書いてお母さんを楽にしてね。小説なんて間単に書けるものよ」と仕事で嫌なことがあるたびに息子に愚痴を漏らしていた。彼はそんな母親の戯言を受け流していたが、無意識のうちに彼女の言葉が心の奥底にこびりついていた。