眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

桜が散る頃には私は一人

「あとかた」も「男ともだち」もしっくりこなかったので、もう読むのは諦めようとした。タイトルからはそこまで惹かれずに、短編だからささっと読めるだろうと読んでいたら取り込まれた。短いページのなかに盛り込まれたむんむんと匂い立つ桜の香りにやられた。特に劇的なことが起こるわけではない。ただ日常が淡々と過ぎていくなかで見過ごしてしまいがちなものを丁寧に掬いとってそれを飾らないでそっと僕だけに見せてくれるような。そんな短編がいくつも収められた「桜の首飾り」はまごうことなき彼女の代表作だ。あまり好んで草木を愛でるタイプではないが、この本を読んでいると今すぐにでも公園にいって花をじっくりと見てみたいという衝動に駆られる。特に桜が見たくなってしまうので、読むタイミングを間違えてしまった。と思いながら短編にするにはもったいないような、ぎゅっとつめこまれた世界観のなかでのんびりとあくびをしながら休日の午後を過ごしたくなるような、そんな優しい本です。「西洋菓子店プティ・フール」が俄然楽しみになってきました。

 

 

桜の首飾り (実業之日本社文庫)

桜の首飾り (実業之日本社文庫)