眠たげな猫の傍で

眠たげな猫の傍で

世界の果てで眠っていたいな

一度目を閉じてしまったらもう二度と開けたくないようなこの世界で僕は今日も呼吸をする

男が道に倒れていた。その姿はあまりにも周りの風景に溶け込んでいるもので、街行く人々は彼に注意を払おうとしない。道の上に落ちている石ころのように、彼はただ動きもしないで倒れていた。でも彼の顔をよくみてみると目は少しだけ開いていて、口もゆっくりではあるが動いている。何かを伝えようとしているのであろうことはわかるが、これほどの些細な所作では内容を判別することは不可能である。段々と彼の動きが緩慢になっていき、夏の日差しが一段と強くなった頃に動きが止まってしまった。ゆっくりと目を閉じたその男は最後に何を思っていたのか、何か伝えたいことはあったのだろうか。考えても分からないことは考えなくてもいいことではない、突き詰めたいなら突き詰めればいいし、飽きたなら忘れてしまえばいい。いずれ彼がこの世にいたということを覚えている人間はいなくなってしまうだろう。それもまた潔くていいではないか。生きた証がどうせいずれはなくなってしまうのなら生きたってしょうがないと思うんだったら好きにしたらいい、でも生きてると「あっよかった」と思える瞬間に一つや二つ出会えるはずだ。それに遭遇するためにその他の時間は暇潰しだと思って生きるのもいいんじゃない。